「紀州のドン・ファン」元妻に和歌山地裁が無罪判決

2024年12月12日 14時21分

事件・事故社会

6年前(2018年)田辺市で「紀州のドン・ファン」と呼ばれた当時77歳の資産家の男性に覚醒剤を摂取させて殺害したとして、殺人などの罪に問われた28歳の元妻の裁判員裁判で、和歌山地方裁判所は、きょう(12月12日)無罪判決を言い渡しました。

逮捕前の須藤早貴被告(2018年5月)

起訴状などによりますと、須藤被告は、2018年5月24日、田辺市の資産家で「紀州のドン・ファン」と呼ばれた野崎幸助(のざき・こうすけ)さん当時77歳に、自宅で何らかの方法で多量の覚醒剤を飲ませて、急性覚醒剤中毒で殺害したとされています。

ことし(2024年)9月から始まった裁判員裁判では、野崎さんが殺害されたかどうかの「事件性」と須藤被告が犯人かどうかの「犯人性」が争点となり、検察側は「遺産目的で完全犯罪を企てた。事件前に『覚醒剤 過剰摂取』『老人 完全犯罪』などとウェブ検索し、密売人から覚醒剤を入手した」などとして無期懲役を求刑したのに対し、須藤被告は「私は殺していないし、覚醒剤を摂取させたこともない」と一貫して無罪を訴え、弁護側も「野崎さんが自分で飲んだ可能性がある」と主張しました。

福島恵子(ふくしま・けいこ)裁判長は、判決理由で「野崎さんが覚醒剤を誤って過剰摂取したことがないとは言い切れない。被告が殺害したとするには合理的疑いが残る」と指摘したほか「被告が密売人から受け取ったのが覚醒剤でなく氷砂糖だった可能性を排除できない。『完全犯罪』などとウェブで検索した履歴を考慮しても殺害を推認するには足りない」とも指摘し、無罪を言い渡しました。

須藤被告は、冒頭、弁護士から渡されたハンカチで涙を拭う姿が見られましたが、そのあとは、福島裁判長をまっすぐに見つめて判決理由に聞き入っていました。

一方、和歌山地方検察庁の花輪一義(はなわ・かずよし)次席検事は「検察官の主張が受け入れられず残念。判決文の内容を精査し、上級庁と協議の上、適切に対応したい」とコメントしました。

須藤被告は、別の男性から現金をだまし取ったとされた詐欺事件で、懲役3年6か月の実刑判決が確定しています。

参加した裁判員は閉廷後の会見で、「今回の裁判は期間が長く、証人も多かった。それを全て吟味して判決を出すのに苦労した。記憶が薄れていく不安もあったが、裁判員同士で情報を出し合い、共有できたのはよかった」と振り返りました。

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