「生還した父のためにホームランを」紀南の高校球児・最後の夏
2023年07月20日 00時23分
心臓大動脈が裂けて生死の境をさまよった父親のためにホームランを打つと目標に掲げた、紀南地方の高校球児の最後の夏が、きのう(19日)終わりました。
白浜町在住で県立田辺工業高校野球部3年の上向天志選手17歳は、父親で、かつて県立熊野高校野球部の正捕手だった上向勇司さん49歳に憧れて小学校から野球を始め、ことし(2023年)ライトのレギュラー・背番号9を獲得しました。
バスの運転手をしている父の勇司さんは、多忙な業務の合間を縫って、自主トレや練習試合に付き添って息子の天志選手を叱咤激励してきましたが、去年(2022年)8月、突然、胸の激痛を伴う心臓大動脈解離を発症し、その後、和歌山市内の病院で手術を受け、辛うじて一命を取り留めました。
父の容態を心配するあまり、修学旅行の辞退を考えるなど悩んでいた天志選手でしたが、勇司さんから「一生の思い出づくりを無駄にするな」と背中を押され、キャプテンの森西希光選手ら仲間からも励ましを受けて立ち直り、ことしの正月「手術を頑張ったお父さんのために、夏の大会でホームランを打つ」と目標を掲げました。
直前に太ももの肉離れを起こして、今大会では控えに回った天志選手でしたが、今月(7月)16日の和歌山東戦では代打に立ったほか、敗れたきのうの和歌山北戦では打席には立てませんでしたが、伝令役に徹するなど、チームの仕事をしっかりと果たしました。
順調に回復し、2試合とも応援スタンドで見届けた父の勇司さんは「打席に立てなかった悔しさは、きっと、次のステージでの飛躍に役立ちます。31年前の私と同じように、紀三井寺の舞台で仲間と全力で高校野球が出来たことは、感謝しかありません」と話し、最後の夏の戦いを終えた息子をねぎらいました。
天志選手は、これから消防隊員を目指して就職活動に取り組むということです。