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現代の名工・森山さん「失敗しながら創り出す」

2023年05月16日 19時32分

イベント歴史・文化社会経済

昨年度(2022年度)の「現代の名工」に選ばれた田辺市の菓子職人、森山昌彦(もりやま・まさひこ)さんが、このほど(3/11)和歌山市で講演し、和菓子と洋菓子の両方を作りながら失敗を繰り返し、新しいものを創り出してきた経験を語りました。

講演する森山さん(2023年3月11日・フォルテワジマで)

これは、紀州の和菓子文化を考える会がこのほど開いた勉強会で語ったものです。

森山さんは、田辺市北新町(きたしんまち)の和菓子店「富美堂(ふみどう)」の三代目店主で、東京の洋菓子店に住み込みで働き、修行をした後、家業を継ぎました。和菓子と洋菓子、ともに1級技能士の資格を持つ森山さんは、それぞれの特徴と技術を活かし、田辺市を含む熊野地域にちなんだ菓子作りを続けてきました。なかでも、栗餡(くりあん)と黄身餡(きみあん)などを、はぶたえ餅(もち)で包み、さらにマシュマロの生地でくるんだ「神島(かしま)の鶴(つる)」は、田辺湾に浮かぶ神島に、縁起がよいとされる鶴が舞い降りる様子をイメージしていて、2011年の全国植樹祭で田辺市を訪れた天皇皇后両陛下、現在の上皇ご夫妻に献上されました。

講演で、森山さんは、神島の鶴の制作過程で、試行錯誤する中、ゼラチンと寒天の量を間違えて作ったマシュマロが、理想のおいしさだったエピソードを紹介し、「失敗してためいきをつきながらも、なんとか形にしようとして頭を打ち、もう要らんと思うくらい試食を繰り返してきた。それでも、新しいものは、なかなかできるものではないが、あきらめずに頑張って完成させた」と述べました。

そして、妻の郁子(いくこ)さんをはじめ、支えてくれた周りの人たちへの感謝を示した上で、「無我夢中で頑張って、なんとかやってきて恐れ多くも現代の名工と呼ばれることになった。名工となるため、この機をスタートとして一から頑張りたい」と決意の言葉を述べました。

勉強会のパネルティスカッションには、森山さんを支えてきた和歌山県菓子工業組合の高橋義明(たかはし・よしあき)事務局長も登壇し、現代の名工に選ばれた要因として、「森山さんが、餡を作る機械を改良して小豆(あずき)の皮をすりつぶさず風味を残す工夫をするなど、洋菓子と和菓子の双方の技術を駆使して新しいものを創り出してきた姿勢が高く評価された」と指摘しました。

パネリストとして森山さんについて語る高橋さん

厚生労働省が1967年に創設した「現代の名工」は、昨年度、全国で150人が選ばれ、和歌山県から選ばれた現代の名工は、森山さんで48人となりました。

参加者に訴えかける鈴木さん

勉強会を主催した紀州の和菓子と文化を考える会の鈴木裕範(すずき・ひろのり)代表は、「森山さんの和菓子の特徴は、地域を素材にしているところで、和菓子を通して地域を語っている」と指摘した上で、「和菓子文化の質を決めるのは、店と消費者を含む地域全体。この機に、地域社会をもう一度、見つめてみよう」と呼びかけました。

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