作家中上健次のメモ発見 憧れの大江作品激賞
2023年05月06日 18時22分
芥川賞作家で現代文学の旗手として活躍した新宮市出身の中上健次(なかがみ・けんじ)が生前、ノーベル賞作家大江健三郎(おおえ・けんざぶろう)さんの初期作品を分析したメモがこのほど見つかりました。
3月に亡くなった大江さんは中上健次の憧れの存在で「シュールレアリストである大江の面目躍如」などと作品を激賞しています。
中上健次は、新宮市生まれで、1976年に「岬」で、戦後生まれの作家として初めて芥川賞を受賞しました。
文芸評論家らでつくる「中上健次顕彰委員会」が去年秋、中上が仕事場にしていた那智勝浦町のマンションの書斎を整理してメモを見つけました。
メモは、B4判3枚で、1958年の大江さんの芥川賞受賞作「飼育」を収録した文庫本に四つ折りにして挟まれていました。
「飼育」は戦時中、敵の飛行機が村に墜落し、脱出して捕らえられた「黒人兵」と、主人公の村の子どもらとの交流や悲劇を描いていて、メモでは小説について「親和力の漲(みなぎ)る空間」「聴覚 視覚 触覚を総合したメタファ」などと記載しています。
1989年夏に都内で行った講演の準備のため書いたものとみられ、中上健次の長女で作家の中上紀(なかがみ・のり)さんは「まさかメモが挟まれていたとは。父の筆跡を見て感動した」と話していました。
このメモは、9月5日まで新宮市立図書館で展示されています。