和市で地域バス試験運行終了 継続に期待の声
2023年04月04日 21時52分
路線バスの廃止で公共交通機関を利用できない住民のため、和歌山市内の7つの地域で去年(2022年)11月から行われてきた地域バスの試験運行がこのほど(2/28)終了し、和歌山市は、利用状況をもとに、今後のあり方を検討しています。
和歌山市は、紀三井寺地区で、すでに2013年から地域バスの本格運行を行っていて普段は一人200円で乗車できますが、この地区を含め、有功(いさお)や川辺(かわなべ)など市内の7つの地区で、去年11月から今年2月まで一人100円で乗車できる地域バスを平日に限り試験的に運行してきました。そして、その利用状況や利用者のアンケートを踏まえ、今後も継続して運行するかどうかの検討を行っています。
この7つのルートのうちの一つ、急な坂を登ったところに住宅地がある木ノ本西脇地区では、最終日の2月28日、多くの住民が地域バスを利用し、満車の状態でした。
利用者のほとんどは、65歳以上の高齢者で、杖をついて買い物や通院に出かける人がこのバスを利用していました。普段は、電動車いすを利用している71歳の女性は、「電動車いすのバッテリーが帰宅するまで持続しないことがあったので、特に冬場は心配です。バスが走ってくれると、とても助かります」と話していました。
利用者の中には、運転免許証を、自らの判断や家族に促されて返納した人も少なくありませんでした。娘に免許を返納するよう求められているという67歳の女性は、「地域バスが続いてくれれば、返納できると思うので、是非、継続してほしい」と話していました。
バスの運行実現に向けて、中心的な役割を担ってきた木ノ本北自治会の西尾健(にしお・たけし)会長は、「急傾斜地で高齢でも車を運転しないと生活できないので、終の棲家とするには、バスがあるとすごく安心。買い物にも出られなくなっている人がいるし、このままだと病院にも行けなくなってしまう。10年以上前から地域バスの運行を働きかけてきた経緯があり、この機会に是非、バスが走るようにしてもらいたい」と話しました。
地域バスの利用者の中には、いまはまだ自ら車を運転しているものの、いずれは、運転できなくなり、地域に出かけられなくなるという懸念から地域バスの利用促進に積極的に応じている人もいました。
しかし、木ノ本北自治会の西尾健会長は「利用促進に応じてくれる人は限定的だ」と指摘し、「1週間ごとに乗車実績をまとめて回覧板を回しているにもかかわらず、地域バスが走っていることを知らない人もいます。介護タクシーを利用できるのは要介護度の高い人で、歩ける人には、地域バスがないと自宅に閉じこもってしまうことになる」と話し、地域バスの必要性を強調しました。
試験運行の期間は4ヶ月間でしたが、バスの運転手は、地域の人たちがバスを利用しやすいよう配慮していました。
木ノ本西脇地区のバスを運行した株式会社「ほっと」の運転手、森田悦雄(もりた・えつお)さんは、「乗り降りする際に必要と判断して踏み台を用意したり、荷物を持ったりしてお客さんのニーズにこたえられるよう配慮してきました。お客さんからお礼を言われてきたことが仕事の励みになりました」と話していました。
実証運行の結果、7つのルートのうち、最も利用が多かったのは、有功(いさお)地区の1便あたり2・5人、次いで川永(かわなが)地区の1・9人、3番目に、木ノ本西脇地区の1・6人でした。ちなみに、すでに通常運行が行われている紀三井寺地区は、1便あたり1・8人でした。
今後、どの地域で継続してバスを運行するか、といったことについては、和歌山市交通政策課が検討していて、今後、発表されます。