「高次脳機能障害者も毎日をゆたかに」オンライン講演
2022年12月12日 20時13分
病気や事故などで脳に損傷を受け、記憶障害などの後遺症で社会生活に支障を来す高次脳機能障害についての講習会がおととい(12/10)、オンラインで開かれました。
高次脳機能障害は、事故や病気などで脳に損傷を受けることで生じる、記憶障害や注意障害、感情のコントロールができなくなるなどの障害で、外見からは、わかりにくいため、見えない障害とも言われています。
今回の講習会は、家族会や作業所などでつくる和歌山高次脳機能障害リハビリテーション講習会実行委員会が主催したもので、11回目となった今回は、3年連続でオンラインでの開催となりました。
講習会は2部構成で行われ、第一部では、神奈川県横浜市にあるNPO法人・脳外傷友の会ナナが運営する「クラブハウスすてっぷなな」の統括署長を務める作業療法士の野々垣睦美(ののがき・むつみ)さんが、「高次脳機能障害者であっても~希望ある毎日を豊かに生きる~」と題して講演しました。
野々垣さんは、作業療法士として、8年間、病院で勤務した後、神奈川県横浜市の家族会が運営する施設で働いていて、「病院で働いているときはわからなかったが、脳に損傷を受けた人は、退院してからが大変。病院は治療の場、地域は生活の場で、まったく違うので、例えば金銭の管理ができるかどうかを入院中に評価するのは難しい」と指摘し、退院してからの支援を受けられるよう、病院と地域とのつながりの重要性を訴えました。
また野々垣さんは、「ケガや病気が治って退院する際、自分に障害があることに気づいていないか、受け入れたくないと思っているケースが多く、自身の障害を理解しないまま、退院後すぐに復職すると、周りの理解が得られず、仕事を辞めざるを得なくなる」と指摘し、自らの特性を職場の人たちに理解してもらう取り組みの必要性を強調しました。
その一方で、野々垣さんは、「仕事をやめることになっても、その理由や原因がわかれば、次に活かすことができる」として前向きな離職と捉えるよう強調しました。
第二部では、高次脳機能障害家族会「和(やわ)らぎ」の会長を務める内藤友香子(ないとう・ゆかこ)さんが、16年前、脳の手術を受け、高次脳機能障害になった夫について講演しました。
この中で、伊藤さんは、「作業所への通所と退所を繰り返す夫を、常に受け入れなければと思い続けてきたが、高度脳機能障害を持つ男性作家の講演で『受容出来たりできなかったりする』と聞き、揺らいでいいのだと思い、ほっとした。あきらめながら、あきらめません」と語りました。
講習会を主催した実行委員会は、今月(12月)24日に高次脳機能障害のある当事者とその家族が互いの仕事や生活などについて話し合う交流会も予定していて、誰でも参加できます。
今月24日の午後1時から午後3時半までの予定で、和歌山市毛見の和歌山県こども・女性・障害者相談センター3階で開かれます。