臓器移植の特別講義 御坊市の看護専門学校で
2022年10月13日 20時04分
看護師を目指す学生に、臓器移植について知ってもらおうという特別講義が、きのう(10/12)、御坊市の看護学校で行われ、和歌山県の臓器移植コーディネーターが臓器移植の現状などを伝えました。
和歌山県内では、臓器移植法が施行された1997年以降、県内の看護学校などで、臓器移植コーディネーターを講師に招き、臓器移植について学ぶ授業が行われています。
御坊市薗の日高看護専門学校では、きのう午後、看護師になるために必要な教育の一環として、2年生を対象に、臓器移植を学ぶ特別講義が行われ、和歌山県の臓器移植コーディネーターを務める中山恭伸(なかやま・やすのぶ)さんが「考えてみよう臓器提供について」と題して授業を行いました。
この中で、中山さんは、脳死となった人からの臓器提供が可能となった1997年10月から去年(2021年)12月末までの24年間に、脳死下での臓器提供の件数が全国で796件あったことや、和歌山県内で発生した脳死下での臓器提供の件数は全国平均を上回っていて、人口100万人あたりの件数は全国一位であることを強調しました。
また、中山さんは、臓器移植を希望しながら、亡くなってしまう人の数が臓器提供を受けた人数を上回っている現状も説明し、「突然、脳死状態になってしまう前に、臓器提供をするかしないか、意思を表示し、家族を交えて話し合ってほしい」と呼びかけました。
さらに中山さんは、臓器提供によって故人の死を生かせると考え、提供に賛同するドナー家族がいることを紹介し、「臓器移植で救われるのは移植を受けた人だが、ドナー家族を救うこともある」と指摘しました。
授業の後、両親と兄2人の5人家族で暮らしている有田市の硲田妃菜(さこだ・ひな)さん20歳は、「臓器移植について考えたことはなかったが、講義を受けて、自分や家族がいつどうなるかわからないので、臓器移植カードや免許証の裏に自分の意思を書いておくのが大切だと思った。提供するかどうか、まだ決まっていないので、きょうは帰って家族と話す機会を作りたい」と話しました。
日高看護専門学校の鳴尾悦子(なるお・えつこ)学校長は、「看護師は、人の命にかかわる仕事なので、生や死を考える機会となる、臓器の提供や移植について学ぶことで、看護師として、知識を広め、自分の考えを深めていってもらいたい」と話しました。
講師を務めた和歌山県臓器移植コーディネーターの中山さんは、「日本で臓器移植が増えない最大の理由は教育にある」と指摘し、「特に、『死』というものに対する教育がなされていないので、せめてこれから看護の道に踏み出そうとする人たちには、『死』というものに向き合ってほしいし、今後も死を考える機会として講義を続けていきたい」と話しました。
今月、10月は臓器移植普及推進月間で、施設をグリーンにライトアップする取り組みが全国各地で行われていて、和歌山県内では、和歌山市の和歌山ビッグホエールが今月19日までライトアップされています。