日高地方から考える ポストコロナの観光産業
2022年08月13日 08時49分
ポストコロナ時代の地域産業の創出や観光産業の振興について、和歌山県の中部・日高地方から考えようというシンポジウムが、このほど(8/7)、御坊市で開かれ、地域振興に取り組む人たちが現状の取り組みなどを語りました。
これは、新型コロナウイルスの感染拡大がおさまった後の生活を送るにあたり、豊かで活力のある地域社会をつくっていくためにどうすればいいのか、近年、若い世代の活動が活発な和歌山県の日高地方から考えようと、和歌山県地域・自治体問題研究所が主催したものです。
シンポジウムでは、和歌山大学客員教授の鈴木裕範(すずき・ひろのり)さんがコーディネーターを務め、4人のパネリストが登壇するなどして、意見を述べました。
このうち、御坊市商工振興課の狩谷晃司(かりや・こうじ)さんは御坊市の日高川沿いにある野口オートキャンプ場をキャンピングカーの聖地とする取り組みが順調に進んでいて、これまでに、100台以上のキャンピングカーが集まるイベントが、愛好家の民間団体によって開かれたことを紹介しました。また、美しい黒髪を見初められ、のちに文武天皇の后となった宮古姫を核にしたプロジェクトについても紹介しました。狩谷さんは、「イベントに集まったキャンピングカー愛好家に聞き取りをすると、高速道路のインターから近いことや市街地に近く買い物ができることなど、キャンプ場に大きな魅力があるとわかった。こうして話を聞くことで光の当て方を考え、アピールの方法を探っていきたい」と話しました。
また、6年前からまちづくりに取り組んでいる御坊市の男女共同参画推進団体「ウィズ・ア・スマイル」会長の木戸地美也子(きどじ・みやこ)さんは、書面で参加し、「まちづくりは人づくり」とした上で、「人づくりには、積極的に関わり、認め合い、信頼を築くことが必要で、それはつまり、人となりを知ってつながっていくことだ」と指摘しました。そして、木戸地さんから聞き取ったコメントをコーディネーターの鈴木さんが紹介し、「昔は何もないところで、面白いこともないと思っていたが、行動し始めて、その考えは変わり、見えてくるものがあった。耕すことができていないだけだった」と強調しました。
この後、コロナ終息後の観光の形などについて意見交換が行われ、官民が連携して日高地域1市6町への教育旅行誘致などを行っている紀州体験交流ゆめ倶楽部副理事長の辻井修(つじい・おさむ)さんは、「日高地方は、関空から1時間で来られるし、大阪との間を2時間で往復できる。また、熊野へ行くのにも便利だ」として、今後、さらに民泊を進めていく考えを示しました。また、辻井さんは、「いろんな可能性を若い人の感覚で考えてもらうことが重要」と指摘し、「広域観光を考えるため、7つの市と町によるワークショップをつくり、実現したい夢を集め、可能なものを選ぶ取り組みを進めていくべき」と提案しました。
元由良町の地域おこし協力隊員で、県外からの移住希望者との橋渡しをしている橋本美奈(はしもと・みな)さんは、ほかの地域と比べて協力隊員の数が少ないことについて、「日高地域の募集サイトは、比較的ふわっとした内容で、何をしてどのように暮らせるのか、イメージしにくい」と指摘した上で、「情報を発信する際には、どの年齢層に向けてなぜこの情報を発信するのか、はっきりさせておくことが重要だ」と強調しました。
コーディネーターを務めた和歌山大学客員教授の鈴木さんは、「行政は、地域おこし協力隊員とミッションを共有して取り組むべきだが、現状は隊員の情熱に頼り切っているように見えるし、住民にとって宝となる地域資源は、まだ十分、発見されていないと感じる」と指摘しました。