和地裁で年金減額訴訟判決 受給者敗訴 全国37件目
2022年05月10日 20時50分
2012年の国民年金法改正に基づく年金の減額は、生存権などを侵害するもので、憲法に違反するとして、和歌山県内の受給者103人が国に減額分の支払いなどを求めた訴訟で和歌山地方裁判所はきょう(5/10)、年金の改正は憲法に違反しないとして原告の訴えを退けました。
原告側によりますと、全国39の地裁で起こされた同じ趣旨の訴訟で判決が出たのは、和歌山県が37件目で、控訴後の高等裁判所での判決を含め、すべて原告側が敗訴しています。
年金の受給額は、過去に物価が下落した際、据え置かれたため、本来より高い水準になるとして、厚生労働省によって2013年から2015年にかけて段階的に2・5%減額されました。
裁判では、原告側が「受給者の生活実態を反映しておらず、裁量権を逸脱している」などとして、生存権や財産権を定めた憲法に違反していると主張し、国に年金の減額分を支払うよう求めたのに対し、国側は、「生活水準や財政状況などを適正に考慮した措置で合法だ」と反論していました。
きょうの判決で、和歌山地裁の伊丹恭(いたみ・やすし)裁判長は、「少子高齢化が進む中、世代間で年金支給額などの公平を図ることによって、継続的、安定的な年金制度にするという法改正の目的や減額措置は、合理性を欠くとは言えない」として、憲法違反にはあたらないという判断を示し、請求を棄却しました。
判決の後、和歌山地裁前に集まった原告団や裁判を支援する人たちが「不当判決は許さない」とシュプレヒコールをあげた後、報告会が開かれる和歌山城ホールに移動し、弁護団から、判決の内容を聞きました。
報告会を終えた原告団の中谷吉治(なかたに・よしじ)団長は、「私たちの訴えに裁判所が誠実に答えておらず、憤りを感じている。特に年金が主な収入源である高齢者にとって、30年間で3割カットに達するような大幅な削減は、とうてい次世代に引き継げる内容ではないし、全国民的な課題として戦っていきたい」と話しました。
年金減額訴訟の和歌山県の原告団は、「判決は承知できない」として大阪高等裁判所に控訴する方針を決めています。