和歌山地方気象台・石井台長講演 稲むらの火講座
2022年03月31日 12時26分
「稲むらの火」で知られる和歌山県の偉人・濱口梧陵(はまぐち・ごりょう)の地元、広川町にある稲むらの火の館でこのほど(3/20)、「稲むらの火講座」が開かれ、和歌山地方気象台の石井嘉司(いしい・よしもり)台長が講演しました。
この「稲むらの火講座」は、広川町にある稲むらの火の館が、館を訪れたことのある専門家らに講師を依頼し、年に2~3度開いているものです。
これまでは、濱口梧陵に関りのある内容で講演会が開かれてきましたが、17回目となる今回は、初めて地震と津波について取り上げることになり、地震や津波が専門の和歌山地方気象台の石井台長が、「地震・津波から命を守る~広川町で南海トラフ地震にどう備えるか~」と題して講演しました。
この中で、石井台長は、日本で発生する地震には、南海トラフなどのプレート境界型地震と、阪神大震災のような陸のプレート内部で起こる地震、明治三陸地震のような海洋プレートの内部で起こる地震の、3つのタイプがあることを紹介したほか、「地震の規模を示すマグニチュードが1増えると、地震のエネルギーが32倍になる」としてマグニチュードが2増えれば、32の32倍でおよそ1000倍にのぼることを説明しました。
また、石井台長は、津波の特性について、「海の水深が深ければ深いほど、速度が速くなる」として、津波が陸に近づくにつれ、ジェット機並みの速さから自動車並みに遅くなることを説明しました。
また、津波の到達予想時刻について、石井台長は、「これは、津波によって海面が変化し始める時間で、高い津波が来る時間ではない」と述べ、津波の到達予想時刻を過ぎたからと言って、逃げるのをあきらめないよう呼びかけました。
また、南海トラフ沿いで、ゆっくり滑りなどの異常な現象が観測された場合には、南海トラフ地震臨時情報が発表され、1週間程度の避難が必要になることも説明しました。
会場で講演を聞いた広川町の町民は、「津波の到達時刻の基準など、知らないことがたくさんあり、勉強になりました」「普段、地震や津波への対応を考えていますが、発生した時、自分がどこにいるかわからないので、実際の行動が伴うかどうか、わからないと思いました」と話していました。
稲むらの火の館の﨑山光一(さきやま・こういち)館長は、「久しぶりに会場がほぼ満席となり、訪れた皆さんには、地震や津波に無関心でいられないことをあらためて実感してもらえたと思います。津波が来るかもしれない時には、早いうちに避難して一人一人が自分の命を守り、それができたら家族、さらに余力があれば、周囲の人を手助けする、という考え方を皆さんに持ち続けてもらいたい」と話しました。