前線が停滞する理由は? 和歌山地方気象台・楠田次長
2021年08月16日 20時11分
西日本を中心に、全国に記録的な大雨をもたらしている前線の停滞について、和歌山地方気象台の楠田和博(くすだ・かずひろ)次長は、「太平洋高気圧が張り出してこないのが停滞の要因で、気温が高く水蒸気量が多いので、大雨になる」とメカニズムを説明し、あす以降も、大雨となるおそれを指摘しました。
停滞する前線の影響で、全国的には、九州を中心に大雨特別警報が出され、各地で河川が氾濫し、土砂災害が発生していて、和歌山県内でも、田辺市護摩壇山で560ミリ、田辺市龍神村で477ミリと、8月一ヶ月間の平均降水量を上回る大雨が降りました。
楠田次長は、前線が停滞している要因として、「例年なら、太平洋高気圧が日本付近へ大きく張り出して真夏の天気になるが、今年は、その張り出しが弱く、ちょうど日本付近で前線ができやすくなっていて、なかなか太平洋高気圧が強まってこないので、停滞したままになっている。いまは梅雨の末期の状況と似ている」と説明しました。
また、太平洋高気圧が張り出してこない理由について、和歌山地方気象台の楠田次長は、「よくわかっていないが、上空の偏西風が蛇行して、南に下がっているのが一つの要因とみられる。この時期の偏西風の蛇行は、めったに起こらないこと」と述べた一方、「広島市で大規模な土砂災害が起きた2014年の夏も、前線が日本海にあった」と指摘し、「夏場は、気温が高くて水蒸気量が多く、大雨につながる。注意しなければならない」と強調しました。
日本に広く前線が停滞する中、九州で大雨が降る理由について、楠田次長は、「前線が東西に横たわり、九州に直接、暖かく湿った空気が入りやすいため。和歌山県には、九州・四国で降らせた後、入ってくるので、相対的には、九州の雨量より少なくなるが、少ないといっても8月の平均降雨量より多い」と述べました。
また、和歌山地方気象台の楠田和博次長は、「いま、前線は紀伊半島の南まで下がっているので、雨は降っていないが、今後、再び北上する見込みで、あすの午後から雨が強まる」と指摘し、「これまでの雨で地盤が緩み、河川が増水している中で、あす以降も、雨が強まると、警報級の大雨になるおそれもあり、十分、警戒してほしい。また、週間予報では、今月20日くらいまで雨が降るので、自治体や気象台の出す情報に注意してほしい」と呼びかけています。