トルコ軍艦の遺物を保存 奈良大、和歌山沖で沈没

2024年02月10日 16時30分

歴史・文化災害・防災社会

1890年に和歌山県串本町沖で沈没したオスマン帝国(現在のトルコ)の軍艦「エルトゥールル号」の遺物を保存するため、奈良大学が、木製品の劣化を防ぐ処理作業を始めました。

「エルトゥールル号」の沈没では、500人を超える乗組員が犠牲となった一方、住民が生存者69人を救出し、両国友好の原点になったとされていて、奈良大学の今津節生(いまづ・せつお)学長は「遺物の保存が友好継続の一助となれば」と期待しています。

「エルトゥールル号」は、明治天皇を訪れる使節団を乗せて来日しましたが、帰国する途中、台風に遭遇して座礁し沈没しました。

周辺の海底では、2007年から、トルコの水中考古学者トゥファン・トゥランルさんを中心としたチームが調査を開始し、ガラスや陶器など8千点以上を海中から引き揚げ、串本町の施設で保管しています。

軍艦は沈没時に水蒸気爆発を起こし、まとまった遺物はほとんど残っていませんが、木製の滑車などが見つかっていました。ただ木材が腐食したり、付属している金属がさびたりするといった劣化が課題になっていて、文化財の保存科学を専門とする今津学長が保存処理を提案しました。

奈良大学は、鎌倉時代の元寇(げんこう)の遺物が沈む長崎県松浦市の鷹島神崎(たかしまこうざき)遺跡で見つかった武器など、水中遺物の保存に実績があり、軍艦の破片といった木製品33点を今年から研究室で保存処理していて、処理が終われば、遺物は串本町に戻すことになっています。

トゥランルさんは「エルトゥールル号は、われわれトルコ人にとって大事な沈没船。保存処理は、遺物の引き揚げよりも長い時間がかかる作業で、奈良大学にはとても感謝している」と語りました。

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