水生爬虫類・モササウルス類に新種「ワカヤマソウリュウ」

2023年12月13日 20時43分

社会

和歌山県・有田川町で見つかった水生爬虫類の一種、モササウルス類の化石を調べていた和歌山県立自然博物館などの研究チームはきょう(12月13日)、記者会見を行い、発掘された化石が、新属・新種として認められ、通称「ワカヤマソウリュウ」と名付けたと発表しました。

記者会見の様子(2023年12月13日・県立自然博物館で)

この化石は、2006年に有田川町長谷川(はせがわ)の鳥屋城山(とやじょうさん)で、およそ7200万年前にあたる中生代白亜紀後期の地層から発見されたもので、4ヶ月間の発掘調査の後、掘り出された石からモササウルス類の骨だけを取り出す5年間に及んだクリーニング作業を経て全長およそ6メートルのほぼ全身の骨格標本が完成しました。

モササウルス類の全身骨格を表す化石は、アジアで初めて、世界的にも貴重な標本で、調査の結果、頭よりも大きな前後のヒレあわせて4枚を持っていたことや、背中の骨の傾きなどから、イルカのような背ビレを持っていた可能性があることが、世界で初めて確認されました。

背骨が前方に向いているあたりに背ビレがあったと推定されている

また、前脚のヒレを使って、ウミガメのような泳ぎ方をしていたとみられ、こうした特徴は、これまでのモササウルス類の定説を覆すもので、イギリスの大英自然史博物館による古生物学の専門誌『ジャーナル・オブ・システマティック・パレオントロジー』に新属・新種として記載されました。

学名は、「メガプテリギウス・ワカヤマエンシス」で、通称「ワカヤマソウリュウ(和歌山滄竜)」です。

研究チームの一員としてきょうの記者会見に出席した4人のうち、論文の執筆を担当したアメリカのシンシナティ大学・生物科学科の教育准教授、小西卓哉(こにし・たくや)さんは、「歯の数や腕の骨の形など、いろんなことをトータルして、ほかのモササウルス類にはない特徴があると認められた。モササウルス類が従来考えられていた以上に多様な形状に進化を遂げていたことを示す重要な資料だ」と話しました。

会見で今回の意義を解説する小西さん

また、大学院時代に、この化石を発見した、有田市出身で、北九州市立自然史・歴史博物館・学芸員の御前明洋(みさき・あきひろ)さんは、「小学生の頃から化石を探しに行っていた場所で見つけることができてうれしいです。和歌山県には、白亜紀の地層があり、面白いことが隠されているので、興味を持って調べる子どもが現れるとうれしい」と話しました。

喜びを語る御前さん

新属・新種に認められた化石のクリーニング作業を5年にわたって行った県立自然博物館・学芸員の小原正顕(おはら・まさあき)さんは、「大量の岩塊から、試行錯誤の末、化石を取り出したので、感無量です。 新属・新種で、世界的に珍しいものだったので、思いのほか付加価値がつき、うれしいです」と話しました。

通称名を示す小原さん

新たに命名された、通称「ワカヤマソウリュウ」の全身骨格標本は、来年4月以降に公開される見込みです。

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