安政の「呼び上げ地蔵」海南市で避難訓練

2023年11月07日 20時49分

災害・防災社会

江戸時代の安政南海地震で津波が押し寄せた際、地蔵が人々を高台へ導いたという伝承が残る海南市で、おととい(11月)5日の夜、自治会の避難訓練が行われました。

地蔵へ向かって坂道を上る自治会の住民(2023年11月5日・海南市井田で)

この地蔵は1854年の安政南海地震の際、津波から避難する住民を導き救ったと伝えられていて、地元では「呼び上げ地蔵」と呼ばれています。

訓練は、この呼び上げ地蔵を活用して防災意識を高めようと、地元・海南市の上神田(かみかんだ)自治会が2018年から毎年行っているもので、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ここ数年は、参加者をしぼって自治会の役員のみとしていましたが、今年(2023年)は、通常開催となり、住民およそ20人が参加しました。

参加者は、海抜7メートルの地点からおよそ250メートル離れた、海抜20メートルの地蔵がある地点まで、懐中電灯で道を照らしながら簡易の担架を積んだリヤカーを引いて歩きました。

地蔵の前で住職が読経する

そして、地蔵の前に到着した参加者は、地蔵を管理する神田地蔵寺の住職が読経する中、静かに手を合わせて、安政の南海地震で犠牲となった人たちをしのんでいました。

リヤカーを引いた小学4年生の女の子と父親の親子は、「暗い中、リヤカーを押すのは大変でした。呼び上げ地蔵のことは知らなかったけど、すごいことだと思う」「自治会の役員でもあり、こんなお地蔵さんが近くにあるので参加した」と話していました。

呼び上げ地蔵について住民に説明する大上さん

上神田自治会の防災担当で、呼び上げ地蔵について調べている大上敬史(おおうえ・たかし)さんは、「実際は、地蔵が住民を呼び上げたのではなく、先に避難した人たちが松明を手に、山の上からふもとの住民に呼びかけたのだと思うが、事実を後世に残すため、先人たちが、物語にして子どもたちに伝えようとしたのではないか。今度は、私たちが伝えていかなければならない」と話しました。

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