闇夜に松明の明かり 稲むらの火祭り完全復活
2023年10月24日 23時48分
江戸時代末期の安政の南海地震で、稲むらに火をつけて津波から村人を救った広川町の偉人、濱口梧陵(はまぐち・ごりょう)の功績をたたえる「稲むらの火祭り」がこのほど(10/21)、4年ぶりに、参加者の制限をなくして通常通りに開催され、およそ600人が松明の行列を作りました。
稲むらの火祭りは、広川町内外の参加者が、役場前から廣八幡宮までのおよそ2キロを、松明の明かりを持って練り歩くもので、住民でつくる実行委員会が、2003年から毎年、行ってきましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、3年前は地元の小学生10数人が歩くにとどまり、おととし(2021年)は、役場前での採火式のみで、去年は、広川町に在住するか勤務する人に限って参加を認めていました。
今年は4年ぶりに全国から参加できる通常開催となり、祭りとしては、完全復活しました。
広川町役場前で行われた出発式には、濱口梧陵が当主を務めた西濱口家の末裔でヤマサ醤油会長の濱口道雄(はまぐち・みちお)さんと、西濱口家とともに広村堤防の築堤に資金を拠出した東濱口家の末裔で、東濱(とうひん)植林会長の濱口吉右衛門(はまぐち・きちえもん)さんがそろって出席し、採火して松明を灯すためのかがり火に火を移しました。
祭りの参加者は、かがり火で火をつけた松明を手に、ゆっくりと練り歩き、廣八幡宮の手前にある田んぼで、西濱口家と東濱口家の2人の濱口さんらが稲むらに火をつけると、梧陵の行動を再現した場面に足をとめ、燃え上がる炎に見入っていました。
西濱口家の濱口道雄さんは、「以前と同じように開催できてうれしい。稲むらの火を忘れず、その精神を伝えるためにこの祭りはとてもすばらしいイベントだと思う。身体が元気であれば、来年も参加したい」と話し、東濱口家の濱口吉右衛門さんは、「今回、初めて参加して松明をもって稲むらに点火した。とても緊張したが、濱口家の一員として、梧陵翁の偉大さを味あわせていただいてとても幸せ」と話しました。
今年の火祭りには、海外からも参加者があり、デンマークから訪れたイシャ・チョーハンさんは、「本当に美しくてすばらしかった。地域の人たちと一緒に参加できてとてもうれしかった」と話しました。
稲むらの火祭り実行委員会の熊野亨(くまの・とおる)事務局長は、「行列には、梧陵さんへの感謝と、津波で亡くなった人の供養、そして避難訓練、この3つの目的がある。これからも、この目的を大切にして町民主体の火祭りを続けていきたい。子どもたちは、いつか広川町を巣立っていくが、ふるさとには、濵口梧陵という偉大な人がいることを誇りに思ってほしい」と話していました。