故・中村隆一郎氏からの伝言 戦争体験掘り起こし
2023年09月15日 19時55分
和歌山県・日高地方の高校生とともに戦争体験者の声を集め、地元で起きた戦争の悲惨さを資料としてまとめた御坊市の故・中村隆一郎(なかむら・りゅういちろう)さんを語る会が、このほど(9月3日)、由良町で開かれ、参加者が平和への思いを新たにしました。
中村さんは、県立紀央館高校の前身、県立御坊商工で教鞭をとっていた1984年から3年にわたって、社会研究部を指導し、地理歴史部の顧問を務める教諭だった小田憲(おだ・あきら)さんとともに、当時の高校生を引率し、終戦直前にアメリカ軍の空襲を体験した日高地方の人たちの声を集め、1987年、「語り継ごう日高の空襲」を発刊し、その後も聞き取りを続け、「和歌山県の空襲」、「常民の戦争と海」、「続和歌山県の空襲」の3つの著作を出版しました。
今月(9月)3日に由良町中央公民館で開かれた第16回戦争体験と平和への思いを語り継ぐ会では、主催する「九条の会ゆら」の小田さんが、「故・中村隆一郎氏からの伝言」と題して講演し、中村さんがライフワークとして取り組んだ戦災・空襲被害調査について、自らも関わった経験を踏まえて紹介し、「中村さんは『何年何月何日の空襲で何名死亡』という記録を良しとせず、『空襲で亡くなった人の名前』『どういった状況で亡くなったのか』にこだわって聞き取り調査を行っていた」と指摘しました。
この後、日高の空襲で犠牲となった御坊市の芝敏子(しば・としこ)さん当時10歳とその家族を記した「芝家の悲劇」を、地元・由良町の女性が朗読しました。
そして、会の最後に、中村さんと一緒に戦争体験者の聞き取りを行った前山輝代(まえやま・てるよ)さんが挨拶し、「安易に入部したが、活動する中で、犠牲になった人の名前だけでなく、どんな人だったのかを引き出そうとする中村先生の姿勢に偉大さを感じ、誰かが伝えていかなければならないことを教えてもらった。当事者から生で話を聞いた私たちは、それらを若い人たちに引き継いでもらえるよう語り継いでいかなければならないと感じている」と話しました。
中村さんとともに、当時の高校生を指導した小田さんは「高校生が聞き取りに参加してまとめた冊子をいまあらためて読んでみて、中村先生の取り組みが、いまの時代にとても大事だと感じた。高校生の時に戦争体験を掘り起こした前原さんが、次の世代に引き継ぐ必要性を語ってくれてうれしかった」と話しました。