和歌山県立医大・VRを用いた緩和ケアプログラム
2023年08月28日 18時40分
和歌山県立医科大学は、拡張現実・VRの技術を用いて、末期がんの患者が自宅や家族の3Dカメラ画像を見ることで、病室に居ながら自宅で過ごしているような体験が出来る緩和ケアプログラムを発表しました。
これは、県立医大の探索的がん免疫学講座の山上裕機(やまうえ・ひろき)教授と、附属病院・看護部の向友代(むかい・ともよ)看護師長、それに、腫瘍センター緩和ケアセンターの月山淑(つきやま・よし)センター長らのプロジェクトチームが、文部科学省の助成を受けて、おととし(2021年)から研究開発を進めてきたものです。
このプログラムでは、あらかじめ患者の自宅や周辺、家族などを3Dカメラで撮影したVR動画を、病室内の末期がん患者と自宅の家族らがVRゴーグルをかけて360度の景色を同時に見たり、音声会話ができ、患者が自宅に戻ったような感覚を得られます。自宅以外にも、患者が通って職場や、夫婦で旅行した思い出の場所などの画像も共有でき、将来的にはリアルタイムの映像と音声を中継できるようになる可能性もあります。
研究グループでは、30代から60代の男女4人のがん患者に実証実験とアンケートを行ったところ「実家の中心にいる気持ちになり気持ちの辛さが緩んだ」「家族と普段の電話以上に話した」などと回答し、精神的な辛さが緩和されたということです。
緩和ケアセンターの月山センター長は「面会が制限されたコロナ禍以降、緩和ケア病棟ではタブレット端末の導入が進んだ一方で、2次元の画像にリアリティが乏しく、患者の満足感が下がっていく点が課題だった。よりリアリティの高い3次元のVR技術を活用すれば、患者の満足度を上げ、精神的苦痛を緩和できると考えている」と意義を強調しました。
山上教授は「今後、緩和ケアだけでなく、遠隔医療や医学生教育など、様々な医療・医学へ応用可能になる。機器の改良や5Gエリアの拡充が進めば、県立医大が目指す『デジタル病院』構想の確立にさらに近づく」と期待を込めました。