華岡青洲の語り部活動 研修受けた人たちが参加
2023年07月03日 19時39分
江戸時代に世界で初めて全身麻酔による乳がんの摘出手術に成功し、医学の塾『春林軒』で多くの医師を育てた紀の川市の偉人、華岡青洲(はなおか・せいしゅう)の語り部養成講座を修了した人たちが、『春林軒』を訪れる人たちをガイドしています。
華岡青洲は、現在の紀の川市に拠点を置いた江戸時代の医師で、20年の歳月を経て麻酔薬「通仙散(つうせんさん)」を完成させ、1804年、世界で初めて、麻酔薬を使った乳がんの摘出手術を成功させた偉人です。
『春林軒』を管理する一般財団法人「青洲の里」が華岡青洲の語り部を育成しようと検定制度を作り、学習会を開催していて、去年4月からこれまでにおよそ60人が検定に合格し、このうち、41人が語り部として登録してデビューに向けた研修などを受けてきました。
そして、語り部活動は、今年5月から本格的に稼働していて、今月(6月)11日に初めて語り部としてデビューした女性は、「学んだことを十分、伝えられなかったし、語るためには経験が必要と感じた。まずは、自分が伝えたいことを伝えた上で、当時の情景が思い浮かぶように表現していきたい」と話しました。
語り部の指導に当たっているのは、元県立那賀高校校長で、検定の問題を監修した谷脇誠(たにわき・まこと)さんで、活動の中で使える華岡青洲の豆知識を、SNSを通じて発信し、語り部のメンバーと共有しています。
これまでに何度も語り部として春林軒のお客さんを案内している女性は「インフォームド・コンセントや感染症対策など現代の医学に通じることに取り組んでいた青洲先生のすばらしさを伝えたい」「地元の人でも、青洲先生のことを知らない人もいる。世界で初の偉業をなした人なのに、なぜ知られていないのか、残念だし、もっと知ってもらえるよう呼びかけていきたい」と話しました。
春林軒を訪れるためだけに、名古屋からやってきたという夫婦は、麻酔薬の開発のため、青洲の妻と母が人体実験に協力し、妻が失明、母が亡くなったことを知り、「妻がどうしても観に行きたいと言うので、名古屋からやってきました。人と人とのつながり薄くなる中で、青洲さんの話は、家族愛の見本のようなもの。ガイドさんの説明も真剣で、引き込まれた。もっと広く知ってもらえるよう帰ったら子どもに話したい」と話していました。
華岡青洲の語り部養成の仕掛人で、「青洲の里」の代表理事を務める神徳政幸(じんとく・まさゆき)さんは、「技術的には、まだまだでも、それぞれが感じたことを語ってもらいたい。これからますます青洲さんに対する思いが募り、語りに反映されてくるのではないかと期待している」と話しました。
また、語り部の事業を始めたことによる副産物として、神徳さんは、「語り部さんが、訪れた人のことをあれこれと聞き出してくれて、どんな人が何の目的で春林軒を訪れているのかがわかってきた。今後は、華岡青洲の語り部でつくる門人会を結成し、活動の幅を広げていきたい」と話しました。