「生活保護のしおり」自治体ごとに内容にばらつき・市民団体の調査で
2023年06月14日 19時40分
和歌山県内の各自治体が作成している生活保護受給者向けのしおりの記載内容にばらつきがあり、中には控除の説明が不十分なものや、扶養義務の説明に誤解を招く可能性があるものもあったことが、市民団体の調査でわかりました。
この調査は、県地評・和歌山県地方労働組合協議会や、クレジット・サラ金被害をなくす会「あざみの会」など、県内16の団体による、生きるための「なんでも相談村」が、昨年末(2022年)から先月(5月)にかけて、和歌山市や海南市など9つの市と、県の海草・伊都・有田・日高・西牟婁・東牟婁の各振興局がそれぞれ作成した「生活保護のしおり」を窓口で取り寄せ、受給を受けるための権利と義務、保護の種類や内容、一時扶助などの説明、ふりがなやウェブ掲載の有無など42項目で、プラス2点からマイナス1点までの点数を付けて、77点満点で評価しました。
その結果、和歌山市が47点で最も高くなった一方、田辺市と御坊市が5点で最も低くなりました。
この中で、多くの自治体が、生活保護の受給が憲法で保障された権利であることを記載していないことや、自立について、就労自立支援だけの記載にとどまり、日常生活や社会生活での自立を含む説明が行われていないところが目立ちました。
また、収入の申告義務に関連して、未成年者のアルバイト収入など控除についての説明が不足している自治体や、扶養義務について「親族から援助を受けることが出来る場合は受けて下さい」といった、生活保護の要件に、本人が親族に扶養を求める必要があると誤解を招く表現をしている自治体もありました。
このほか、医療機関を受診する際の医療券制度や、交通費にあたる通院移送費などの説明がされていないところや、ウェブサイトでしおりの内容を閲覧できるのが、和歌山市と海南市のみとなっている現状も指摘しています。
調査を行った生きるための「なんでも相談村」では「この結果を県や市町村の担当部署に持って行き、どんな人でも入手しやすく、誤解を招く表現を避け、義務だけでなく、権利の部分にもっとスポットを当てた、より良い生活保護のしおりづくりに力を入れてほしい」と話しています。