児童虐待死・検証委が報告書と提言まとめる
2023年03月29日 17時26分
おととし(2021年)6月、和歌山市内で当時16歳の女子が、同居していた実の母と再婚相手の男から虐待を受け死亡した事件を検証してきた、有識者による検証委員会が、報告書と提言をまとめ、きょう(29日)記者会見しました。
この事件は、おととし6月9日、和歌山市内の集合住宅で、当時16歳の女子が、心肺停止で救急搬送されたあと死亡したものです。実の母親は、その日、女子の4歳の妹とともに大阪の関空連絡橋から飛び降りて死亡した一方、母親の再婚相手の男は保護責任者遺棄致死の容疑で逮捕・起訴され、今月(3月)15日、和歌山地方裁判所から懲役6年の判決を言い渡されました。
県では、事件を受け、女子が通っていた中学校や、県の児童相談所の対応などを検証するため、去年(2022年)3月、有識者5人による検証委員会を設置し報告書をまとめたものです。
それによりますと、女子が中学2年以降、欠席が増えたり、友人がアザや火傷を確認したこと、3年生になると、まったく登校しなくなったことを認識していたにもかかわらず、事態をスクールカウンセラーなどに相談せず、自宅の場所も把握しておらず、家庭訪問もしていなかったことがわかったほか、児童相談所や和歌山市教育委員会、地域社会など、周囲もそれぞれ十分な対応が出来なかったと指摘しました。
和歌山信愛大学教授で検証委員会の桑原義登(くわはら・よしと)委員長は「これだけ虐待が顕在化しているのに、教育現場や関係機関に他人事(ひとごと)という意識が強い気がする。また、虐待は身体の傷だけでなく、気になる行動や態度などからも察知しなければ、早期発見は難しい」と総括しました。
また、児童相談所を管轄する、県・こども未来課の鈴木玲(すずき・あきら)課長は「連携と簡単に言うが、実際はとても難しい。児童相談所は、新たな事案が起こるたびに、その都度慎重な対応が求められるほか、保護児童を親から隔離するにしても、長期的に見ると、援助が遠のき子どもの生きる力が育たないリスクも考えながら運営していかなければならない」と述べました。