和歌山県勢歌、ボカロで復活 県立博物館でパネル展開催中

2023年02月21日 11時11分

歴史・文化社会経済

戦前に制作されながらその後、歌い継がれることなく歴史にうずもれていた和歌山県勢歌が、このほどボーカロイドの音声でよみがえり、復活のいきさつなどとともに、和歌山県立博物館で展示されています。

県立博物館で行われいる和歌山県勢歌のパネル展

県立博物館によりますと、和歌山県勢歌について、20年ほど前からその存在を指摘する声が県などに寄せられていましたが、資料がなく、確認できていませんでした。

こうした中、去年(2022年)10月、県勢歌を作曲した故・鈴木富三(すずき・とみぞう)さんの遺族で、横浜市在住の鈴木徹(すずき・とおる)さんから、義母の記憶を頼りに書かれた楽譜や、県勢歌が完成したことを伝える昭和14年・1939年当時の新聞記事が寄せられました。

これを受けて、県立博物館が、県立図書館に残されていた昭和14年の新聞記事や雑誌を調べたところ、県勢歌の楽譜と、1番から5番までのすべての歌詞が判明したほか、制作された状況もわかりました。

調査の結果、すべての歌詞が開催された新聞記事を発見

それによりますと、この県勢歌は、県統計課と県統計協会が、5月10日の統計記念日にあわせて発表したもので、当時としては珍しい全国公募で歌詞を募り、寄せられた176点の中から3つの優秀作品を選び、これをもとに、県師範学校の2人の教諭が作詞し、県師範学校の音楽教諭だった鈴木さんが作曲して完成させました。

歌詞は、昭和13年度の和歌山県の統計資料をもとに公募された経緯があり、4番の歌詞は、『紀州みかんは日本一 ネル・けし・漆器・梅・鯨・松・杉・檜さまざまの 生産すべて三億円』となっています。

調査を担当した県立博物館の竹中康彦(たけなか・やすひこ)副館長は、県勢歌が完成した後の状況について、「昭和14年9月に文部省に届け出て和歌山県内の学校で教材として歌うことを許されたため、80歳代後半の高齢者に知っている人が多いのだと思う。しかし、その後、昭和16年に国民学校令が出て教育内容が画一化されたので、歌われなくなったのではないか。戦後は、県民歌ができたこともあり、忘れられていったのではないか」と指摘しました。

和歌山県勢歌を復活させた竹中さん

調査で見つかった新聞記事には、「近くレコードに吹き込み」となっていましたが、県勢歌のレコードは見つかっていません。このため、県立博物館が、ボーカロイドを使って歌を再現しました。県勢歌の曲は、ト長調の4分の2拍子で、明るい行進曲風です。

県立博物館では、調査でわかった内容をまとめてパネル展「よみがえる『和歌山県 県勢歌』」を開催中で、音声合成ソフト・ボーカロイドによる歌唱を、館のホームページや会場のQRコードで公開しています。展示は来月(3月)5日までです。

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