紀州松煙墨職人・堀池雅夫さんの和歌山県名匠表彰受賞記念展
2023年02月15日 18時33分
一度途絶えてしまった、紀州独自の墨「紀州松煙墨(きしゅう・しょうえんぼく)」を復活させるとともに、その技法を応用して様々な色の墨を生み出し、今年度(2022年度)の和歌山県名匠表彰に選ばれた、堀池雅夫(ほりいけ・まさお)さんの受賞記念展が、和歌山市の県民文化会館で開かれています。
堀池さんは、1951年・静岡県出身で、東京での生活に疲れたことから、夫人の出身地・田辺市大塔(おおとう)地区に移住し、その後、自らの工房「紀州松煙(きしゅうしょうえん)」を設立して、昭和30年代に途絶えてしまった紀州独自の高品質な書画用の墨「紀州松煙墨」の復活に尽力しました。
紀州松煙墨は、中紀の山中を中心に、松の木を燃やしてつくったすすを原料に、少なくとも平安時代からつくられていて、熊野詣(くまのもうで)に訪れた後鳥羽上皇(ごとばじょうこう)が絶賛するほどの品質の良さが特徴です。
堀池さんは、その技法を応用して、1998年には、黒以外の色合いを持たせた墨「彩煙墨(さいえんぼく)」の開発にも成功し、全国や海外の書画家から好評を得ています。
県民文化会館1階の特設展示室で開かれている受賞記念展では、松煙墨と彩煙墨の現物や、堀池さんがそれらを使って描いた書画作品、原料の松の木や炭俵などが展示されているほか、彩煙墨を使って色塗り体験が出来るコーナーも用意されています。
堀池さんは「水彩や油彩では出しにくい淡いグラデーションと、にじみにくい強さが多くの芸術家の心をとらえています。墨は2000年前には既に完成していた、息の長く奥の深い道具です。このような展覧会やインターネットなどを通じて、もっと紀州松煙墨と彩煙墨を発信して魅力を広げていきたい」と話しています。
堀池雅夫さんの県・名匠表彰受賞記念展は、今月(2月)20日・月曜日まで、和歌山市の県民文化会館1階・特設展示室で開かれています。入場は無料です。