金田一氏講演「本は何度読んでも怒らない」

2023年01月31日 19時26分

イベント教育社会

言語学者の金田一秀穂(きんだいち・ひでほ)さんがおととい(1/29)、和歌山市で講演し、「本は優しいので、何度、読んでも怒りません。難しい本に挑戦して何度も読み返し、いろんな人の考え方を知ってほしい」と呼びかけました。

講演する金田一さん(2023年1月29日・県民文化会館大ホール)

これは、今年度の読書推進フォーラムとして和歌山県教育委員会が主催したもので、フォーラムでは、金田一さんの講演の後、県内在住の絵本作家や書店の経営者、図書ボランティアらが参加した座談会が開かれました。

金田一秀穂さんは、日本語の大家として知られる金田一京助(きょうすけ)氏を祖父に、金田一春彦(はるひこ)氏を父に持つ言語学者、国語学者・一家の3代目で、これまでアメリカなどの海外で日本語を指導してきたほか、多くの著作を通じて、日本語の大切さなどを語り続けています。

「本は優しい」と題して講演した金田一さんは、「本は優しくて、何度、読んでも怒ってこないので、読みやすい本だけでなく、古典などの難しい本にも挑戦してほしい。はじめは、難しいところを飛ばして読んでもいいし、読み返せば、本は、何度も教えてくれる」と語った上で、「この人は信用できるという、道しるべとなる人の本を見つけて、関りのある本を読んでほしい」と薦めました。

また、読書をする理由について、金田一さんは、「本を読むことで、言葉が増える」と指摘し、「言葉は、考える手段で、感じる道具。言葉がなければ、自分の頭の中をはっきりさせて気持ちを形にすることができない」と述べ、言葉を増やすことのできる読書の大切さを訴えました。

この後、フリーアナウンサーの笠野衣美(かさの・えみ)さんが進行役となって公開座談会が開かれ、和歌山市の「本」屋プラグの嶋田詔太(しまだ・しょうた)さんと、紀美野町在住の絵本作家でイラストレーターのすけのあずささん、それに橋本市の隅田(すだ)中学校区共育コミュニティ・コーディネーターの土田敦子(つちだ・あつこ)さんが登壇し、本との出会いをつくる工夫などについて語りました。

進行役の笠野さん

この中で、嶋田さんは、「例えば、ヒップホップの生まれた背景を調べると、アメリカのストリートカルチャーを知ることになり、さらに、奴隷制などの歴史につながっていく。このように、本は、自分の好きなものの背景を探るときのサポートになる」と指摘しました。

嶋田さん

また、すけのさんは、「レコードやCDのジャケットを見て買う、ジャケ買いのように、本の表紙を見て買うことがある。そのときは、すぐに読まなくても、のちに開いて読んでいる」と話し、本屋で、気になる本を探すことを薦めていました。

すけのさん

小学校の図書館ボランティアとしても活動している土田さんは、「学校の先生オススメの紹介するコーナーを作るなどして、子どもたちが楽しくなる、行きたくなる図書館づくりに取り組んでいる。小学生からオススメの本を聞かれることもあり、人のつながりから、本に手が伸びやすくなるのではないかと思う」と強調しました。

土田さん

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