誰一人取り残さない避難所運営訓練 海南市巽地区で

2022年11月28日 20時40分

災害・防災社会

南海トラフ巨大地震による地震と津波による被害が想定されている海南市で、このほど(11/13)、生後4ヶ月の赤ちゃんを含め、高齢者や障害者など、さまざまな立場の市民が集まった避難所の運営訓練が行われました。

海南市の巽中学校で行われた避難所運営訓練(2022年11月13日)

海南市では、毎年、11月に南海トラフ地震の発生を想定したおよそ4万8千人の市民全員が参加する避難訓練が行われていて、沿岸部の市民は、津波避難場所まで移動し、内陸部の市民には、安否確認を行っています。

そして、この訓練にあわせて毎年、重点地区を決め、海南市主催の防災訓練が行われていて、今年は、内陸部の巽地区で「誰一人取り残さない避難所運営」をテーマに行われました。

災害発生から3日後を想定した訓練では、避難所となっている巽中学校の体育館に、別の場所にある備蓄倉庫などから支援物資が運び込まれ、避難してきた想定の人たちや災害ボランティアらが段ボールのパーテーションで居住スペースを作ったり、テントを張って更衣室や家族用のスペースを作ったほか、幼い子どもが遊べるキッズスペースも設けられました。

段ボールベッド製作中

4ヶ月の息子を含め4人の子どもを連れて避難した栗本好基(くりもと・よしき)さん37歳は、「キッズスペースがあったので、子どもたちの気もまぎれて普段、ゲームをしている子どもたちが、ブロックやお絵描きを楽しんでいたのでよかったです。ただ4ヶ月の子どももいるので、災害が発生した際には、おむつなどを備蓄している自宅になるべくとどまるようにしたい」と話していました。

また、妻の奈緒美(なおみ)さんは、「4ヶ月の子どもが、段ボールベッドに静かに寝転がっていたので、快適に過ごせそうです。ただ、授乳やおむつを替える場所があるのか、子どもの夜泣きにどう対応すればいいのか、気になりました」と話していました。

段ボールベッドに寝転ぶ4ヶ月の男の子をのぞき込む女子高生

こうした懸念について、海南市危機管理課では、今回の訓練で、男女それぞれの更衣室と授乳室を設けたほか、災害時には、教室も開放し、赤ちゃんのいる家族だけで利用できるよう配慮するということです。

舞台上に設営された授乳室

訓練を終えた海南市危機管理課の坂本匡也(さかもと・まさや)課長は、「災害関連死が起こらないように、障害者や小さな子どもなど、災害時に配慮が必要な人たちにも対応できる避難所運営を訓練しました。避難所で孤立しストレスを抱える恐れのある子どもたちが、今回の訓練では、キッズスペースで自宅のようにくつろいでくれたと聞いたので、とてもよかったと思います」と話しました。

訓練の様子を見学し、最後に講評した和歌山大学災害科学・レリジエンス共創センターの宮定章(みやさだ・あきら)特任准教授は「乳児や障害者、高齢者が避難してくる訓練に参加し、それぞれの様子を目の当たりにすると、災害時を想像するこができる。画期的な訓練で、今後も繰り返し実施してほしい」と話していました。

講評する宮定さん

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