災害ごみを処理した梧陵 第18回稲むらの火講座

2022年11月15日 16時45分

イベント歴史・文化災害・防災社会

広川町出身の偉人、濱口梧陵(はまぐち・ごりょう)に関連して研究している専門家らを講師に招いて開かれる「稲むらの火講座」が、このほど(10/9)開かれ、県立文書館の砂川佳子(すながわ・けいこ)さんが「夏のよかたり~地域資料からみる濱口梧陵と広村~」と題して講演しました。

今回の講演会は、稲むらの火の館が、県立文書館と共催で開いたものです。

この中で、砂川さんは、天保11年、1840年生まれで、梧陵より20歳年下の渋谷伝八(しぶや・でんぱち)が、亡くなる1年前の明治42年、1909年に書き残した渋谷家文書の「夏の夜かたり」について、古文書の中身を音読して紹介しながら梧陵の功績を記した内容を詳しく説明しました。

講演する砂川さん

砂川さんは、濱口梧陵が、稲むらの火で村人の命を救った安政地震の復旧に際してとった行動の一つとして、堤防の建設地を、破壊された家屋の廃棄場所としたことが、「夏の夜かたり」に書かれていることを紹介し、東日本大震災で課題となった災害廃棄物の処理を、梧陵が実践していたことを強調しました。

その上で、砂川さんは、「「夏の夜かたり」には、広橋の架け替え工事など4つの事業を、地震の前から、そして地震の復旧が済んだ後には、異国船の襲来に備える浦組の結成など5つの事業を梧陵が中心となって行ったことが記されていて、伝八は、「稲むらの火」のようなことは、決して梧陵に対する大恩(だいおん)と言えるものではなく、こうした広村永遠の救済策を講じたことこそが大恩のいわれだと強調している」と解説しました。

参加した広川町内の男性は、「おおまかに災害時の復興のことしか知らなかったが、前後の功績も知ることができてよかった。知らないことが多いと気づかされたので、これからもっと勉強して、伝えていけるようになりたい」と話していました。

県立文書館の砂川さんは、「がれきをどのように処理したか、という点については、他の古文書に記されているのを見たことがなく、珍しくて貴重な資料」と指摘した上で、「今回の資料は、稲むらの火の館の﨑山館長から提供されましたが、皆さんの自宅にもまだ眠っている古文書があるかもしれないので、もし見つかったら、保存状態の良いものも悪いものも、すべて処分せず、県立文書館や、お住まいの市町村教育委員会などに知らせてほしい」と呼びかけています。

講座を進行する﨑山館長(左)

渋谷家文書の「夏の夜かたり」は、インターネット上の和歌山県歴史資料アーカイブで閲覧できます。

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