和歌山県名匠表彰式・「紀州松煙墨」製作の堀池雅夫さん表彰
2022年10月31日 12時32分
和歌山県内の伝統工業の継承などで功績のあった人を表彰する、今年度(2022年度)の和歌山県名匠(めいしょう)表彰の表彰式が、きょう(31日)和歌山県庁の正庁(せいちょう)で開かれ、田辺市・大塔(おおとう)地区で「紀州松煙墨(きしゅうしょうえんぼく)」を製作する堀池雅夫(ほりいけ・まさお)さん71歳に、仁坂吉伸(にさか・よしのぶ)知事から表彰状が贈られました。
松煙墨は、松の「すす」と「にかわ」を混ぜ合わせて作られる墨で、奈良時代には既に日本で作られていました。とくに紀州の松煙墨は質が高く、平安時代には京から熊野詣(くまのもうで)に訪れた上皇に献上されるほどで、紀州の山村の貴重な収入源となっていましたが、昭和30年代に入ると、コストの安い鉱油墨(こうゆぼく)に取って代わられ、途絶えてしまいました。
昭和26年(1951年)静岡県出身の堀池さんは、35歳の時に田辺市へ移住し、妻の実家の製煤業(せいばいぎょう)を継ぎ、知人の依頼で、途絶えた紀州松煙墨の製作を始めました。
松材500キロを小さな炎で2週間かけて燃やしても、採れるすすはわずか10キロ程度で、それをにかわと練り合わせて型に入れ、灰の中で乾燥させて墨に仕上げるには半年以上もかかる大変手間のかかるもので、 日本で原料のすすづくりから行っている職人は、堀池さんただひとりとなっています。
仁坂知事は式辞で「その功績は誠に多大で、県民とともに末永く賛辞を呈したい」と賞賛しました。
堀池さんはお礼を述べ「紀州松煙墨を使う人の立場に立ってどう活かすかを、Zoom(ズーム)などのSNSで全国や海外に発信したい」と今後の抱負を語りました。
堀池さんは、すすに顔料を加えてにかわに練り込み鮮やかな色を付けた「彩煙墨(さいえんぼく)」も創案していて、紀州松煙墨の更なる発展に意欲を燃やしています。