日本最古のあんこ屋、きょう100年超の歴史に幕
2022年09月30日 19時34分
あんこの製造業者として日本で最も長い歴史を持つ、和歌山市の「株式会社きたかわ商店」がきょう(9/30)、廃業の日を迎え、店舗で最後の販売が行われました。
「きたかわ商店」は、明治43年、1910年に大阪市の北川製餡所から独立開業してあんこの製造を始めた、100年以上の歴史を持つ日本で最も古いあんこ製造の会社で、和歌山県内外の和菓子店などにあんこを提供するとともに、昭和56年、1981年からは、和菓子店「一寸法師」を開店し、オリジナル和菓子の小売販売も行ってきました。
社長を務める内藤和起(ないとう・わき)さん68歳は、3年ほど前から、急変する経営環境の変化に対応できていないと感じるようになり、コロナ禍や後継者問題などを踏まえて企業買収を画策し、一度は、ほぼ決まりかけたものの、増設を重ねた工場に、建築基準法上の問題が浮上して不調に終わりました。その後、さらにのれんの売却を検討しましたが、従業員の雇用が守られないことがわかり、廃業することを決め、今年(2022年)7月に開いた従業員への説明会で、全員が廃業まで仕事に従事することになり、きょう、最終日を迎えました。
最終日のきょう、内藤さんは、和歌山市東紺屋町(ひがしこんやまち)の店に出て最後の接客を行い、常連客らに感謝の言葉をかけていました。
和菓子を買いに訪れた和歌山市の男性は、「ここのあんこがおいしくて、好きでした。いろいろと工夫して商品開発にがんばっていたので、閉店と聞いてびっくりしました。みさき公園が復活すると聞いたので、ここも復活してくれないかなと思います」と話していました。
内藤さんは、「こうして最後まで従業員が残ってくれて、あんこをたいて商品を出すことができて幸せです。きょうも、高野山からわざわざ買いに来てくれて、あんこ屋冥利につきます。23年間、社長を務めてきてよかったと思えるし、ここ数日で、本当に、感謝という意味がわかりました。最後は、笑顔で終えます」と声を詰まらせながら語りました。
店内には、きたかわ商店で修業して独立したあんこ職人から贈られた花など、多くの花束が飾られていました。
和歌山県菓子工業組合によりますと、きたかわ商店の廃業で、県内のあんこ製造業者は、3者のみになるということです。