絵本で全国行脚 『ママ、ぼくがきめたことだから』
2022年08月29日 19時07分
急性脳症で3歳の息子を亡くした横浜市の女性がこのほど(7/9)、和歌山市で開かれたお話会に参加し、息子をテーマにした絵本を朗読するとともに、自分と同じように、子どもを亡くした母親に向けてメッセージを贈りました。
このお話会は、青少年の健全育成などに取り組んでいる和歌山市BBS会が毎年、開催している講演会の一環として開いたもので、今年(2022年)は、4年前の2018年、急性脳症で3カ月半の闘病の末、三男を亡くし、自分を責める気持ちを乗り越え、絵本を出版した河原由美子(かわはら・ゆみこ)さん38歳を講師に招きました。
河原さんは、三男が生きていれば7歳の誕生日を迎えるはずだった今年5月16日、全国を巡る活動をスタートし、命日の9月1日までの間、絵本を朗読し三男について語る講演会を開きながら47都道府県の図書館に絵本を寄贈しています。
お話会で、河原さんは、発熱してけいれんを起こした三男が、その後、急性脳症となり、医師から脳死を告げられたときのことを振り返り、「なんとかして生き返らせたいと思いながらも、徐々に弱っていく三男を前に、初めてなすすべがない自分を体感し、命がなくなっていくのを初めて体験した」と話しました。
河原さんは、「三男を失った後、『自分が風邪をひかせていなければ』などと思い、自分のせいで三男が死んだと考えていたが、三男が、自分の人生を3年と決めて生まれてきたのかもしれないと思うようになり、もしそうなら、それを受け入れてあげないと理不尽だし、もしかすると、自分が忘れているだけで、私も自分の子どもが3歳で亡くなるという人生を選んで生まれてきたのかもしれない、とも思うようになり、気持ちが楽になった」と振り返りました。
そして、おととし2020年に「息子に言ってもらいたいこと」をまとめた絵本『ママ、ぼくがきめたことだから』を出版した経緯を説明し、「三男を失ってからは、深い悲しみに襲われ、鬱(うつ)状態になり、物忘れがひどくなったため、忘れてしまわないように、何か形に残そうと絵本にまとめた」と述べました。
また、河原さんは、子どもを亡くした人たちが集える場所として「Twinkle(トゥインクル)- mom(マム)」を立ち上げ、毎月、対面とオンラインで交流を図っていて、「活動する中で、自分の思いを打ち明けられる場を求めている人がたくさんいることを痛感した」と話しました。
お話会で河原さんの話を聞いた参加者は、「まだ子どもがいないので、子どもを失くす悲しみはわからないが、悲しみを乗り越えて別の人を支援するというのはすごいと思う」「人間はいつか亡くなるが、大切なのは、一緒に過ごした時間の長さではなく、何を残せるかだと思うし、絵本になって話が受け継がれていくのは、亡くなった子どもの一番の望みだったのではないかと思う」と話していました。
河原さんは、今後、自らと同じように子どもを亡くした母親たちとともに、「命をテーマにした絵画」を描き、それぞれの体験談をあわせて掲示した展示会を来年1月から、河原さんの経営する横浜市のカフェをはじめ、各地で開くことにしています。