六十谷水管橋破損・調査委員会 最終会合
2022年07月05日 19時11分
去年10月、和歌山市の紀の川にかかる水管橋が崩落し、北部地域で大規模な断水が発生した問題で、和歌山市はきょう(7/5)、調査委員会の最後の会合を開き、今後、とりまとめる報告書と水管橋の維持管理マニュアルの案に対する専門家からの意見を聞きました。
和歌山市では、去年10月3日、紀の川にかかる全長546メートルの水道水を送るための橋のうち、中央部分のおよそ60メートルが突然、崩れ落ち、北部地域のおよそ6万戸で1週間にわたり断水が発生しました。
和歌山市は、調査委員会を設置して事故の原因や再発防止策を検討していて、その最後の会合がきょう午後、和歌山市役所で開かれました。
会合では、和歌山市企業局の職員が報告書の案を説明し、「鳥のフンなどの付着物により錆が発生し、強風対策のため部材を後付けした吊材(つりざい)のほとんどが破断していた」と指摘した上で、「橋が落ちた最も大きな要因は、この吊材の腐食にある」と結論付けました。
また、水管橋の維持管理マニュアルの案では、橋の上部の点検にあたっては、アーチ材や吊材など7つの項目にわけて詳しく行います。また、基幹の水路のうち、特に断水などの影響が大きい六十谷水管橋など、6つの特別管理対象については、和歌山市企業局が半年に一度、点検するのに加えて5年に一度、ドローンやロボットカメラを使った専門家による点検を行うほか、老朽化が進んだ場合には、2年に一度の点検とします。
和歌山市企業局の説明を聞いた4人の専門家を代表して座長を務める神戸大学大学院工学研究科の鍬田泰子(くわた・やすこ)准教授が講評し、「事故の発生前も、目視点検は行われていたが、六十谷水管橋の特徴を考慮した維持管理は行われておらず、適切な維持管理が必要。特に、大規模で構造が複雑な六十谷水管橋は、点検の死角となるところが多く、構造上の注意点も多岐にわたる。今後の点検でも目視が基本となるが、劣化の進んだ箇所では、直接触れるなどして劣化状況を把握し、通常より細かい管理を徹底するとともに、維持管理システムを確実に未来につなぐための人材育成も必要。マニュアルにも、新たな知見を取り入れブラッシュアップしていくことや組織的な体制の確保が重要」と指摘しました。
これに対し、和歌山市企業局の瀬崎典男(せざき・のりお)公営企業管理者は、「報告書とマニュアルが完成した後も、これでいいのか、という視点を持ち、すべての危機管理の方法をブラッシュアップできるよう努め、水道利用者に対する信頼回復につなげていきたい」と挨拶しました。
今後、和歌山市企業局では、9月中をメドに報告書と維持管理マニュアルをまとめ、ホームページに公開することにしています。
ところで、この大規模断水を巡っては、仮設の水道管は、すでに撤去されていて、あすから2本目の送水管の利用が始まり、完全復旧となります。