伊藤和明元NHK解説委員「稲むらの火を教科書に」
2022年07月04日 19時07分
NPO法人・防災情報機構会長で元NHK解説委員の伊藤和明(いとう・かずあき)さんがおととい(7/2)広川町の稲むらの火の館で講演し、「稲むらの火」を通した防災教育の必要性を強調しました。
伊藤さんは、東京大学理学部地学科を卒業後、東大教養学部の助手を経てNHKに入局し、1978年から解説委員を務めました。
おととい稲むらの火の館で行われた講演会で、伊藤さんは「歴史に学ぶ津波災害」と題して講演し、被災後に現地を訪ねて見聞きした2011年の東日本大震災や1983年の日本海中部地震を例に挙げながら地震による津波が引き起こす災害について説明したほか、江戸時代末期の安政の南海地震で村人の命を救った濱口梧陵(はまぐち・ごりょう)の逸話「稲むらの火」を、教科書に掲載するなどして語り継ぐことの重要性を強調しました。
伊藤さんは、「東日本大震災では、宮城県石巻市の大川小学校で『裏山へ逃げよう』と言った子どもがいたにもかかわらず、大人の判断でそのように動かず、74人の児童が犠牲になった一方、宮城県山元町の中浜小学校では、校長の判断で屋根裏部屋に避難して一夜を明かし、児童全員が、自衛隊に救助された」と述べ、「子どもの命は、引率する教師の危機管理の問題だ」と指摘しました。
また、1896年の明治三陸地震津波について、伊藤さんは、「プレートがヌルヌルとゆっくり動くので、地震の揺れは大きくなかったが、ひずみを蓄積して跳ね上がるので、大きな津波が押し寄せた」と説明し、「こうした海溝型の地震は、津波地震と呼ばれ、日本の近海で起きる地震の1割がこれにあたる」と指摘しました。
さらに、1983年の日本海中部地震では、秋田県の海岸に、内陸の小学校から遠足で訪れていた小学生13人が津波の犠牲になったことを紹介した上で、「当時、『日本海側に津波は来ない』といった誤った言い伝えがあり、被害を拡大した」と指摘しました。その上で、伊藤さんは、「戦争中から終戦後にかけて教科書に掲載されていた『稲むらの火』が、このときも掲載されていれば、小学生は犠牲にならなかったのではないか」と強調しました。
講演を聞いた地元の男性は、「実際に伊藤さんが現地を訪れて見聞きしたことなので説得力がありました」「あらためて稲むらの火の伝承が大切だと思いました」と話していました。
講演会には、およそ30人が参加し、講演後の質疑応答で、相次いで質問していました。