「若い語り部の育成を」 第16回稲むらの火講座開催
2022年06月27日 14時10分
広川町の「稲むらの火の館」が、館を訪れたことのある専門家らを講師に招いて開催する「稲むらの火講座」が、このほど(6/4)開かれ、神戸大学地域連携推進本部・特命准教授の山地久美子(やまぢ・くみこ)さんが「全国被災地語り部シンポジウムの取組みから考える防災・減災」と題して講演しました。
山地さんは、淡路島の野島断層保存館や東日本大震災の宮城県南三陸町、熊本地震の被災者らに声をかけて「全国被災地語り部シンポジウム」を開催するなど、全国の被災地をつなぐ活動を行っています。
講座で、山地さんは、「東日本大震災の被災地には、若い語り部がたくさんいるが、その原点にあるのは、後悔。阪神淡路大震災の語り部も、同じ体験をしてほしくないという思いを持っていて、後悔という言葉が、語り部の中でキーワードになっている」と指摘した上で、「災害を体験した人が所属しない、広川町の日本遺産ガイドの会の語り部とは違いがあるが、いずれも、被災地語り部だ」と強調しました。
山地さんは、「被災地語り部とは、自然災害の被災地で、地域の歴史や被災経験を、防災・減災の重要性とあわせて学び、命を守るため次の世代へ伝える活動を実践している人や団体で、津波の被害を受けた小学校などの災害遺構もこれにあたる」と述べました。
また、語り部の年代について、山地さんは、「語り部の高齢化が課題だと指摘する声があるが、高齢化はまったく問題でなく、むしろ話に厚みが出る。問題なのは、語り部に若い世代がいないこと。この若い語り部を増やしていく必要がある」として、企業で働く人の副業禁止の緩和や、個人のボランティア活動を支援する制度の構築など、社会の仕組みづくりの必要性を強調しました。
今回の講座は、当初、去年9月に予定されていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で今年1月に延期され、さらに感染の第6波で状況が悪化したため、再度、延期された経緯があり、講座を聞いたおよそ60人は、熱心に聞き入っていました。