龍神村で墜落B29の慰霊祭 米ジャーナリストも参列
2022年05月05日 19時25分
終戦の年の1945年5月5日、田辺市龍神村殿原の山中に墜落したアメリカ軍の爆撃機B29の搭乗兵を弔う慰霊祭がきょう(5/5)、現地の慰霊碑前で営まれ、今年はアメリカ人ジャーナリストも参列して犠牲者の冥福を祈りました。
これは、龍神村の殿原区が主催して、毎年、5月5日に開いているもので、今年で78回目です。
墜落したB29は、1945年5月5日の午前11時頃、殿原の上空で日本軍の戦闘機に撃墜されたもので、当時の人たちは、アメリカ兵の遺体を埋葬して弔い、終戦前の6月9日に初めての供養を行いました。
慰霊祭は、今年も、終戦の2年後に建立され水害などで移転を繰り返してきた慰霊碑の前で営まれましたが、新型コロナウイルス感染防止のため、大幅に参加者を減らして実施されました。
きょう午前9時から龍神村殿原の慰霊碑前で営まれた慰霊祭には、地元・殿原区の住民ら15人が参列し、地元・大応寺(だいおうじ)の松本周和(まつもと・しゅうわ)住職が読経する中、慰霊碑の前で焼香して手をあわせていました。
また慰霊祭では、B29墜落の様子を目撃し、その後、史実を調査して著作を出版するとともに、慰霊祭の運営を支えている地元の郷土史家、古久保健(ふるくぼ・けん)さん84歳が挨拶し、「平和を願い、再び過ちのない世の中をつくるためにいかに自分たちが努力をするか、これがこれからの課題。ウクライナの状況を見るにつけ、自分たちの行いがなぜ通じないのか、大変残念に思っていますが、あきらめず平和を追求していきたい」と訴えました。
今年の慰霊祭には、奈良県の大峯山(おおみねさん)に墜落したB29について調査しているアメリカ人ジャーナリストのデイビッド・カパララさん33歳も参列しました。
式典の後、カパララさんは、「奈良県では、まだ開催できていませんが、こうした慰霊祭は素晴らしいと思う。昔のことを勉強して供養するのは大事なことで、時間がたつにつれて戦争の当事者が減っても、平和づくりは続けていかないといけない。いつか奈良で、アメリカの遺族を日本に招き、交流したい」と語りました。
また、古久保さんは、「縁もゆかりもないアメリカ兵の霊をなぐさめるための慰霊碑があるこの場所は、地域の平和の原点だと実感します。未来に残すべき慰霊祭は、少々、体力がなくなっても、先頭を切って実施したい」と語りました。
古久保さんが務める語り部の後継者として、地元の3人が、活動に取り組んでいて、このうち、きょうの慰霊祭には、公務員の五味一平(ごみ・いっぺい)さん44歳が参列し、式典の後、「私は、B29が墜落した様子を見ていたわけではありませんが、古久保さんから引継ぎ、慰霊祭を続けていきたい」と決意を語りました。
仏式の後には、神式の慰霊祭も営まれ、カトリック新宮教会の神父が祈りを捧げると、カトリックの信者らが聖歌を歌ってアメリカ兵の霊をなぐさめていました。