『紫香庵』24日で移転、城下町から消える和菓子屋
2022年04月22日 19時16分
和歌山城の近くに店を構える和菓子店『紫香庵(しこうあん)』が、あさって24日で現在の店舗を閉めて引っ越すことになり、移転の準備を進めています。城下町に残る和菓子屋がまた一つ減ることに、識者からは、懸念の声も聞かれます。
『紫香庵』は、店主の須賀良知(すが・よしとも)さん58歳が18年前、和歌山市七番丁にオープンした店で、もちもちとした食感のまんじゅう「紀州太鼓」や、葛で作った「葛アイス」、寒天を土台にして生菓子をトッピングした「和ケーキ」など、伝統的な商品に加えて新たな和菓子を創り出し販売するとともに、小中高校や大学、婦人会や老人会などで参加者が生菓子などを作る和菓子教室を開いています。
ブラジルで生まれた須賀さんは、大学を卒業した後、22歳の時、帰国して曾祖父が創業した、うすかわ饅頭で知られる串本町の和菓子店『儀平』で働き始め、40歳で独立して、『紫香庵』の店舗を開きました。
「和歌山城の近くから、和菓子の情報を発信していきたい」という思いで開いた店でしたが、18年経って、家賃の値上げなどもあり、今回、やむを得ず、移転することにしたものです。
移転先は、南海電鉄加太線の東松江駅近くにオープンする喫茶店に併設される予定で、オープンの日はまだ確定しておらず、来月(5月)中旬頃となっています。
『紫香庵』の須賀さんは、「18年経って、店の存在も知られるようになっていたし、移転してこの地域の人たちと離れるのは残念ですが、『移転先まで買いに行くよ』と言ってくれる人もいて、ありがたいです」と話し、「これからも、地元に密着した、皆さんに好かれるような和菓子屋であり続けたい」と話しています。
和歌山大学客員教授で、紀州の和菓子と文化を考える会代表の鈴木裕範(すずき・ひろのり)さんは、「地元生まれの和菓子屋が消えてしまった海南市と同じように、和歌山市でも、まちの中心部、かつての城下町にある和菓子店は減っていて、菓子文化の空洞化が進んでいる」と警鐘を鳴らしています。