和歌山県内の救命率向上へ 近大で点滴の実習指導

2022年03月18日 10時56分

社会福祉・医療

救急の現場で働く消防の職員が、大学で開発された、人体と似た感触の腕に点滴の処置を行う実習が、きのう(1/17)、紀の川市の近畿大学生物理工学部で行われ、那賀消防組合の救急救命士が指導を受けました。

練習用の腕の模型に注射針を刺す救急救命士(2022年3月17日)

近大生物理工学部と那賀消防組合は、先月(2月)、災害時の包括的な支援協定を結んでいて、今回の実習指導は、その取り組みの一環として行われました。

きのう近畿大学和歌山キャンパスで行われた実習指導には、那賀消防組合の救急救命士9人が参加し、臨床工学技士で近大生物理工学部医用工学科の西手芳明(にしで・よしあき)講師から点滴する際の針を刺す角度など、注意点を聞いた後、3つの班に分かれて実習に取り組みました。

注射針の角度を指導

実習では、注射針を刺す練習をするために開発された、人の肌の感触に似せた模擬血管の通った腕の模型が使用され、参加した救急救命士が、点滴の針を刺す静脈の位置を指で確認したり、針を刺した後、静脈に届いたかどうかを確認して点滴につないでいました。

近畿大学生物理工学部で開発された注射を練習できる腕の模型

実習を受けた救急救命士は、「今回は、いつもより深いところにある血管だったので難しかったですが、初めての経験でよかったです」「年齢や病歴によって、血管のもろさや深さが違うので、今回の研修は有意義でした」「この経験を忘れず、救急活動にも生かしていきたい」と話していました。

指導にあたった西手講師は、「少しでも知識や技術を身につけようと真剣に取り組んでくれました。ベテランの人がスムーズだった一方で、若い人たちは不慣れなところもありましたが、最後には、皆さん、同じようなレベルに到達していたと思います。こうした実習は、今後も希望があれば、行いたい」と話していました。

指導にあたる西手講師(右)

岩出市と紀の川市をカバーする那賀消防組合では、年間およそ5千件の救急出動のうち、160件程度が、心肺停止やショック状態などの患者で、点滴で薬剤を投与する必要がありますが、一方で、高度の救命救急センターのある和歌山市まで搬送するのに時間がかかるため、那賀消防組合消防本部警防課の加藤尚(かとう・ひさし)班長は、「技術の向上を図ることで救命率を高めたい」と話しています。

この実習指導は、今月16日にも行われ、2日間であわせて20人の救急救命士が実習を受けました。

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