かつらぎ町で災害ごみ搬出訓練 全国初の環境省モデル事業

2021年11月30日 20時29分

イベント災害・防災社会

災害の発生時に問題となる災害ごみについて考え、実際にどのような対応をすべきかを体験してもらおうと、おととい(11/30)、かつらぎ町の里山で災害ごみの搬出訓練が行われました。

ごみを発出する住民(2021年11月28日・かつらぎ町新城地区で)

これは、環境省近畿地方環境事務所が全国初の環境省のモデル事業として、和歌山県やかつらぎ町とともに合同で主催したもので、おとといの訓練には、かつらぎ町新城地区の住民およそ20人を含む60人余りが参加しました。

午前中は、新城交流センターで座学が行われ、国士舘大学専任講師で国立環境研究所客員研究員の森朋子(もり・ともこ)さんが「災害によって発生するごみの基本」と題して講演しました。

講演の様子

この中で、森さんは、ごみを選別する大切さを指摘し、運搬用の車両に積み込む際には、自治体が示した災害ゴミの集積場所の見取り図を参考に、集積場の入り口から入って、順に災害ゴミを捨てられるよう、積み込む際の順番に気を付けることなどを指摘しました。

また、座学では、アマチュア落語家のゴスペル亭パウロさん、こと、小笠原浩一(おがさわら・こういち)さんが、災害ゴミの課題を交えた防災落語を披露し、防災士の資格を持つ主人公の小学生と母親とのユーモラスな掛け合いが、会場の笑いを誘っていました。

ゴスペル亭パウロさんによる落語上演

午後からは、参加者が自宅に戻り、災害ゴミとなりそうな、瓦や自転車など自宅にある粗大ごみを軽トラックなどに積み込み、集積場として設定されたセンター近くにある場所に集めました。

訓練を終えた参加者は、センターに集まり、問題点と解決策について互いの意見を出し合い、最後に、専門家が講評しました。

講評する田畑さん

神戸大学人間発達環境学研究科准教授の田畑智博(たばた・ともひろ)さんは、「今回、出されたごみの中には、普段あまり使わないと思われる物が多かったが、こうして廃棄せずに保管している物が、災害時に便乗ごみとなる可能性が高いので、この機会に、家族で保管しておくかどうか、話し合ってほしい。また災害時の便乗ごみが増えないよう、行政が、普段からごみを出しやすい環境を作っていくことも大切」と指摘しました。

講評する森さん

訓練を終えたかつらぎ町新城地区の中前光雄(なかまえ・てるお)区長は、「この新城地区は、山崩れや川の増水がいつ起きてもおかしくない危険な地域。災害が起きた場合にどうするか、という住民の意識を高める上で、きょうの訓練はとても有意義だった」と話しました。

挨拶する中前区長

また、環境省近畿地方環境事務所・資源循環課の山根正慎(やまね・まさのり)課長は、「行政が準備した計画と、発災した際のごみの対応に、大きなギャップが出てくるのを埋めるために、全国初のごみの搬出訓練を実施し、多様なごみが出てくることがわかった。和歌山県やかつらぎ町の多大な尽力で実現できたこの訓練の成果を、近畿発の取り組みとして、全国に広げて災害対応能力を高めていきたい」と話しました。

挨拶する環境省近畿地方環境事務所の山根課長

和歌山県循環型社会推進課では、今後、県民に対し、災害ごみを分別して搬出することの大切さを啓発していく方針で、来年1月15日には、田辺市の県立情報交流センター「Big U(ビッグ・ユー)」で県民向けの講座を開催することにしています。

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