那智山で献茶式、江戸千家宗家家元「コロナ終息願う」
2021年10月03日 17時33分
秋の気配が漂い始めた那智勝浦町那智山で、江戸時代に活躍した茶人で、江戸千家流茶道の流祖、川上不白(かわかみ・ふはく)を偲び、ご神体の那智の滝に祈りをささげる献茶式が、きょう(10/3)、不白の茶の湯の伝統を伝える江戸千家宗家家元のお点前で行われました。
川上不白は、江戸時代後期に、新宮の水野家家臣の家に生まれ、茶道を表千家7代、如心斎宗左(じょしんさいそうさ)に学び、江戸で千家流の茶道を広め、江戸千家流祖となった大茶人です。
不白の茶道の伝統を伝える東京・弥生町の茶家(ちゃけ)、江戸千家宗家(えどせんけそうけ)蓮華菴(れんげあん)では、不白の龍神信仰をうかがわせる「宝珠双竜紋」(ほうしゅそうりゅうもん)を刻む不白像を所蔵しており、2008年から毎年秋にご神体として那智の滝を祀る熊野那智大社でお茶を献じる献茶式と茶会を開いています。
今年で14回目を迎えたきょう、午前10時から熊野那智大社の男成洋三(おとこなり・ようぞう)宮司が見守るなか、那智の滝前に設(しつら)えた点前席で、去年秋に11代蓮華菴家元を襲名した川上流水斎閑雪(かわかみりゅうすいさいかんせつ)家元が、大きな音を響かせ、水しぶきをあげて流れ落ちるお滝に、お点前を披露し、新茶で点てたお茶を献上しました。
献茶を終えた閑雪家元は、「去年11月に家元を襲名して以来、那智山では初めての献茶式となりましたが、目の前に神々しい那智の滝を見ながらお茶を点てることには、独特な緊張感がありました。そうした中で、那智山の神様に、新型コロナの一日も早い終息と、元の日常が戻ってくることを祈りました」と話していました。
新型コロナ対応の緊急事態宣言などが解除されたとはいえ、感染の恐れは去っておらず、茶会は、去年に続いて取りやめとなり、ごく限られた人たちによる献茶式のみとなりました。
このため、那智の滝の前には、コロナ以前に全国から訪れていた茶人の姿はありませんでしたが、訪れた観光客らが、厳かな式の様子を興味深げに見学していました。