全国弁護士会ADRセンター連絡協議会、和市で開催

2021年09月13日 19時46分

災害・防災社会

裁判を通さず紛争を解決するための手続きを行うADRセンターの全国組織・全国弁護士会ADRセンターの第25回連絡協議会がこのほど(9/10)、和歌山市のホテルで開かれ、障害のある人に対するADRのあり方が議論されました。

2021年9月10日・和歌山市 ホテルアバローム紀の国で

ADRセンターは、裁判や裁判所による調停とは違い、弁護士が関わって話し合いで紛争を解決するための組織で、今年5月末現在、全国35の弁護士会に38のセンターが設置されています。

和歌山弁護士会は、2013年4月にADRセンターを設置し、その半年後には、災害に特化したADRを立ち上げ、これまでに県と県内30市町村すべてとの間で災害協定を締結したほか、2017年には、「障害者なんでもADR」の看板も掲げています。

今月10日の午後1時から和歌山市のホテル・アバローム紀の国で開かれた連絡協議会では、和歌山弁護士会のADRセンター設立で中心的役割を果たした畑純一(はた・じゅんいち)元弁護士会長や、弁護士会内の災害対策委員長として自治体との間で災害ADRに関する協定締結に取り組んだ和歌山弁護士会の九鬼周平(くき・しゅうへい)副会長が、これまでの経緯を説明しました。

和歌山弁護士会のADR立ち上げの経緯を説明する畑・元弁護士会長
災害ADRについて説明する九鬼副会長

そして、和歌山大学教育学部の西倉実季(にしくら・みき)准教授が「合理的配慮における対話~障害の社会モデルを手掛かりに」と題して基調講演しました。

講演する西倉准教授

この中で、西倉准教授は、「社会は、歴史的にみて、健常者のニーズのみを考慮し、障害者のニーズを軽視して発展を遂げてきた」という問題意識を紹介した上で、「障害者への合理的配慮には2つの側面があるが、『特別な恩恵』としてではなく、『社会的な不正義を正す』という趣旨で配慮し、建設的な対話をする必要がある」と指摘しました。

このあと開かれた「専門ADRの可能性~障害者なんでもADRの活用を通じて~」と題したパネルディスカッションでは、日本弁護士会ADRセンター委員長で仙台弁護士会の斉藤睦男(さいとう・むつお)弁護士が登壇し、「和歌山弁護士会が掲げる『障害者なんでもADR』という名前には、アピール力がある。障害者にとっては、『私の問題を解決するドアがここにある』と思うきっかけになり、潜在化したニーズを掘り起こすことができる」と指摘し、専門ADRの意義を強調しました。

コーディネーターを務める森脇委員長

また、和歌山弁護士会ADRセンター運営委員会の委員長で、パネルディスカッションのコーディネーターを務めた森脇大介(もりわき・だいすけ)弁護士が県内で経験した事例を紹介したほか、和歌山市で障害者の作業所を運営するNPO法人「りとるの」理事の山本功(やまもと・いさお)さんは、オンラインで登壇し、「ADRを利用する際、近所の人や支援者など日頃、お世話になっている人が、相手側になる可能性もあり、関係が悪化しないか不安だ」と話しました。

オンラインで参加した山本さん

これに対し、斉藤弁護士は、「間に立つ弁護士によっては、非難の応酬になってしまう可能性もある。しかし、過去を精査する裁判に対して、ADRは、未来を模索するので、社会的な障壁こそ、双方の共通の敵と考えることができれば、解決の道を探れるのではないか」と指摘しました。

ADRのあり方についてコメントする斉藤弁護士

この連絡会議の基調講演とパネルディスカッションには、弁護士のほか、大学の専門家や自治体・障害者団体の関係者が参加し、およそ30人が会場を訪れたほか、110人余りがオンラインで聞き入りしました。

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