日高川干潟、埋め立て工事撤回 専門家が再発防止の要望

2021年07月20日 18時28分

歴史・文化災害・防災社会経済

和歌山県立自然公園の一部に指定されていて絶滅危惧種が生息する日高川河口の干潟を、県が、堤防改修工事のため、一時、埋め立てていたことがわかり、このほど(7/14)、生物の専門家が再発防止を求める要望書を提出しました。

要望書を手渡す中井克樹・日本生態学会近畿地区会自然保護専門委員会委員長(右)と生駒部長

御坊市を流れる日高川の左岸側の河口には、環境省の日本の重要湿地500にも選ばれた干潟があり、ほぼ全域が煙樹海岸県立自然公園の一部に指定されています。

この干潟と日高川の境界には、正常な水の出入りを促すための堤防として導流提が設置されていますが、老朽化で一部が破損し、干潟の泥が川に流れ出していることから、県は修復工事で必要となる重機を搬入するため、今年3月、干潟の真ん中に砂利を敷いて仮設道路を建設しました。

修復工事の現場が県立公園内だったため、工事担当の日高振興局から実施の可否を打診された環境生活部の担当部署が、許可を出しましたが、3月中旬に、県立自然博物館の学芸員ら専門家から干潟の環境悪化について指摘があり、県は、5月に仮設道路を撤去しました。

これについて、日本生態学会近畿地区会・自然保護専門委員会の委員で、和歌山大学教育学部の古賀庸憲(こが・つねのり)教授ら3人の専門家が、今月14日に県庁を訪れ、改修工事の再開にあたっては、干潟への影響を極力小さくし、今後、工事の際には、専門家に相談する機会を設けるよう求める要望書を、県環境生活部の生駒亨(いこま・とおる)部長に手渡しました。

意見交換する古賀さん(左奥)と中井さん(左中)と和田恵次・奈良女子大学名誉教授(左手前)

要望書を提出した古賀さんらは、「今回は、県立自然公園に指定された干潟だったので、問題として取り上げやすかったですが、他にも、県が生物多様性を守る上で大切な場所と認識しているものの、法の規制がかからないところがたくさんあります。環境影響評価が必要ではない場所であっても、絶滅危惧種のいる重要な地域はあるので、今後は、専門家に事前に相談するシステムをつくってしてほしい」と訴えました。

県は、修復工事に必要な仮設道路に代わる方法を検討するとともに、環境影響評価の必要のない工事についても影響をチェックする仕組みをつくる方針で、県環境生活部の生駒部長は、「今後、県だけでなく市町村や民間も含めてすべての工事を把握し必要な措置を提示するなど、できるだけ負荷の少ない方法で建設できるよう全庁的な体制をつくりたい」と述べました。

県は、日高川の干潟について、工事方法を検討して今年度中に導流提の工事を再開する予定です。また、県内の工事を一元的に把握し、環境に及ぼす影響がないかを検討して必要な措置を講じるための仕組みづくりについても構築に向けて検討を進めることにしています。

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