柳田の熊楠宛ての書簡発見、未収録3通
2021年06月06日 14時58分
日本民俗学の祖、柳田国男(やなぎた・くにお)が、南方熊楠(みなかた・くまぐす)に宛てた書簡が、新たに3通見つかりました。柳田が、研究者として、先輩の熊楠の助言を頼りにし、2人の深い交流がうかがえる貴重な資料となりそうです。
熊楠研究者で、成城(せいじょう)大学非常勤講師の田村義也(たむら・よしや)さんは「柳田は、熊楠の批評を敏感に意識しながら研究していたことも推察できて興味深い」と述べました。
書簡は、1911年秋に書かれたとみられる1通と、14年5月1日、15年2月5日付のあわせて3通で、和歌山市立博物館が、2011年3月に熊楠の関係者から購入したまま、詳細な分析がされてこなかったということです。
14年5月の書簡では、学術出版に乗り出した柳田が、熊楠の「燕石考(えんせきこう)」という英語論文を世に出したいと訴え、自ら金策を買って出る熱意が示されています。南方熊楠顕彰会の雑誌「熊楠研究」15号で、3通の書簡を分析した田村さんは「出版プロデューサーとして金銭的な苦労をしてまで強く働きかけた柳田の意欲も分かる。重要な証言だ」と語りました。
3通の書簡は、筑摩書房(ちくましょぼう)が刊行中の「柳田国男全集」に収録される予定です。