山﨑邸で展示の絵手紙に感銘 自作の歌を被災地へ

2021年03月11日 19時57分

災害・防災

紀の川市で開催中のひな祭りをテーマにした絵手紙展に、東日本大震災で被災し夫を亡くした岩手県に住む女性の作品が展示されています。この作品に感銘を受けた和歌山市の男性が、このほど辛い思いをした女性に、「いのちの絵手紙」と題した歌を作って贈りました。

紀の川市粉河の古民家「山﨑邸」では、近くにあるJR粉河駅前の商店街を盛り上げようと、イベントの実行委員会が、2015年から「粉河とんまか雛通り」を開催し、例年、店舗などにひな人形を飾り、絵手紙展も開いてきました。

今年は、新型コロナウイルスの影響で規模を縮小し、新たな絵手紙の募集をやめてこれまでに寄せられたおよそ5千点の中からひな祭りをテーマにしたおよそ440点、例年の半分程度の作品を選び、先月(2月)21日から展示しています。

展示作品の中には、東日本大震災で被災し夫を亡くした岩手県釜石市の岩間律子(いわま・りつこ)さん79才が、6年前に応募し、当時は、入選から漏れて展示されていなかった作品も含まれています。

展示されている岩間さんの絵手紙

山﨑邸の大広間に飾られた岩間さんの作品は、津波に流された自らのひな人形への思いが込められていて、結った髪がほどけた女びなと、それに寄り添う男びな、そして2体の周りには、「誰のせいでもないのです。あの大津波が夫も連れて行ったのです」と記されています。

絵手紙のそばに置かれた感想ノートには、観た人の思いが・・・

この絵手紙に感銘を受けた和歌山市の笹木誠次(ささき・せいじ)さん70歳が岩間さんの気持ちが少しでも楽になれば、とこのほど「いのちの絵手紙」という歌を作詞作曲し、ユニットを組む生田友季子(いくた・ゆきこ)さんとともに演奏してDVDに収め、岩間さんに送りました。

岩手県に住む岩間さんのもとには、きのう(3/10)DVDが届きましたが、岩間さんによりますと、パソコンがなく、まだ観ることができていないということです。

岩間さんは、「震災で夫を失った当時は、『なぜ自分だけ残されたのか』というつらさがありましたが、10年経って、ようやく『お父さん、もう少し生きるね』と、夫の写真に話しかけられるようになりました。3年ほど前から体調が悪くなり、絵手紙は、まったく書いていませんでしたが、今回、6年前に書いた絵手紙が展示され、おひなさまが生き返った気がして沈んでいられないと思い、ここ数日、絵手紙を書いています」と話しました。

また、岩間さんの作品を観た地元・粉河の絵手紙サークルのメンバーが、絵手紙を送りたいと話していて、岩間さんは、「絵手紙をもらえば、私も書いて返したい」と話し、笹木さんから届いたDVDについては、「早く観たいので、友だちに頼んでパソコンを借りようと思っています。とても楽しみで、感謝しています」と話していました。

歌を作った笹木さんは「岩間さんには、早く観てもらいたいですが、どんな反応が返ってくるのか、ドキドキです。人間は自然には勝てませんが、思いを共有して助け合うことはできる、今回の歌に込めたこの思いを伝えられたら」と話していました。

岩間さんの絵手紙を見つけて展示した実行委員会の副委員長、池田香弥(いけだ・かや)さんは、「絵手紙を見つけた時は、悲しくてせつなくて、でも迫力のあるこの作品がなぜ眠っていたのか、驚きました。6年前は、初めての絵手紙展で明るい作品を集めたためか、この作品は、受賞を逃し展示されていませんでしたが、東日本大震災から10年になる今年、これなら、被災地の悲しみを伝えられると思い、展示しました。作品を観て岩間さんに絵手紙を書くという人や歌を贈った人がいるように、いろんな形で被災地を思う人が増えてくれば」と話していました。

来場者に説明する池田さん(左)

岩間さんの作品も展示されている「第7回 粉河とんまか雛通り」は、あさって13日まで、紀の川市粉河の山﨑邸で開かれています。開催時間は、午前11時から午後3時までです。

また、笹木さんの歌は、ユーチューブで公開されています。

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